研究課題/領域番号 |
15J05210
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桂 将太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 東部亜熱帯モード水 / 混合層 |
研究実績の概要 |
アルゴフロートの観測データの解析により、東部亜熱帯モード水の形成要因、形成域における季節・経年変動、サブダクション過程を調べた。東部亜熱帯モード水の形成域である北太平洋亜熱帯域東部の冬季混合層深度の極大域が、夏季の海面密度極大の分布とよく対応していた。この海面密度極大の形成には海面塩分フロントの存在が重要であることがわかったほか、この海面密度極大が形成されることで亜表層との密度差が小さくなり、局所的に成層が弱く、冬季混合層の発達しやすい状況となっていた。この状況が東部亜熱帯モード水の形成に重要であると考えられ、東部亜熱帯モード水形成における海面塩分フロントの存在の重要性が新たに示唆された。また、形成域における混合層水温・塩分の季節・経年変動とそのメカニズムを調べたところ、両者の季節変動において、冬季に混合層が深くなることに伴う混合層の下からの低温・低塩水のエントレインメントが重要な役割を果たしていた。さらに、等密度面上を水温偏差と密度補償する塩分偏差であるスパイシネスアノマリーが、形成域から経年的に亜熱帯循環内を伝播している様子が確認できた。このスパイシネスアノマリーは基本的に形成域の水温変動を反映していたが、年によっては塩分変動が重要な寄与を持っていた。一方で、東部亜熱帯モード水は海洋内部にサブダクト後、速やかに消失していた。このことから東部亜熱帯モード水消失後もアノマリーは海洋内部に残ると考えられる。また、この経年的なアノマリーが翌年の冬季に再出現しない要因として、下流域の冬季混合層深度がスパイシネスアノマリーの伝播する深度よりも浅いことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで東部亜熱帯モード水の形成過程、サブダクション過程を対象に研究を行った。研究目的である、形成域における東部亜熱帯モード水の水温・塩分の季節・経年変動の調査および季節変動のメカニズムの解明を達成することができた。さらに、形成域における経年変動に関連した経年的なスパイシネスアノマリーが等密度面上を亜熱帯循環に乗って下流域へと伝播していること、東部亜熱帯モード水が海洋内部へサブダクト後、速やかに消失する一方で、これらのスパイシネスアノマリーが海洋内部に消えずに残ることなど、東部亜熱帯モード水のサブダクション過程に関して新たな知見を得ることができた。また、形成位要因に関しても海面塩分フロントに伴った夏季海面密度極大の存在の重要性を指摘できた。以上より、現在までの進捗状況は予定通り順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は東部亜熱帯モード水形成域においてスパイシネスアノマリーがどのように形成されるのか、海洋内部へサブダクトしたスパイシネスアノマリーが亜熱帯循環全体の構造にどのような影響を及ぼすのか、などの残された部分を詰め、論文として投稿する予定である。また、論文投稿後、本研究のもう一つの研究対象である中央モード水および移行領域モード水に研究対象を移す。これらのモード水の形成域における季節・経年変動およびそれらのメカニズムの解明、具体的な流路などその詳細なサブダクション過程の解明、そしてサブダクトしたこれらのモード水が先行研究によって指摘されている経年的な水温アノマリーの下流域での再出現とどのように関連しているのか、その定量的評価を研究目的としてさらに解析を行う予定である。
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