本課題のまとめとして、2017年度日本政治学会大会〈法政大学〉にて、分科会「実務官僚・統治者における政治思想史」を企画し、「漢学的政治学の実践 実務官僚川路聖謨の思想」を発表した(発表者:木村俊道・濱野靖一郎・大久保健晴。司会:松本礼二。討論者:渡辺浩)。 本企画は、従来思想家と呼ばれる人々の著作が研究の対象とされているなかで、実際に統治に預かった人々はいかなる思想を持っていたか、をテーマに開催した。とりわけ川路は、朱子学や兵学への深い造詣を持ち、荻生徂徠・新井白石のみならず頼山陽の著作からかなりの影響を受けていた。まさに、山陽の思想が幕末にいかなる影響を与えたか、という本課題にとって最も重要といえる人物である。これまでは外交官としての川路に注目が当たっていたが、奈良奉行をしていたときの日記である『寧府紀事』を主に取り上げ、裁判や学問所の運営といった内政面からその統治思想を検討した。 本発表は改定を加え、日本政治学会に投稿し、日本政治学会『年報政治学』2018年Ⅰ号への掲載が決定した。改定した箇所は、川路を引き立てた幕臣・羽倉簡堂をとりあげたことである。彼も幕末から明治にかけて多くの人物を引き立て、その後の学問・政治に多くの影響を与えた人物で、その思想は頼山陽からかなりの影響をうけていたことを論じた。これにより幕末の幕臣(とりわけ高級官僚)に於いて山陽の思想が受け入れられていたこと、また、それゆえに西洋の学問受容に中国朝鮮とは異なる姿勢を持っていたことを論証した。 その他に『日本思想史学』49号に論文「宰相の職掌-『周礼』に於ける王安石と太宰春台-」を、アジア遊学『関ヶ原はいかに語られたか : いくさをめぐる記憶と言説』に論文「徳川家康-天下太平への「放伐」」を掲載した。どちらも漢学の政治思想をめぐる論稿である。
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