研究実績の概要 |
平成29年度は、主に以下5点を柱に研究活動を行なった。【1】所謂「支那通」研究。中国人対日協力者の問題を考える際に、ゆるがせにできないのは「支那通」と呼ばれた人々である。対日協力者の中にはこうした「支那通」と関係を持った人が多いからである。にもかかわらず、「支那通」の概念は漠然としており、明確な定義はなされていない。このため「支那通」概念を整理し、現代中国学会・中国研究会他で報告した。【2】華北占領地における対日協力の実像。注目したのは、北京政府時期に有力な政治家であった呉佩孚と彼の下に集まった人々が組織した日支民族会議である。同会の機関紙の内容を分析した結果は、2017年7月及び9月にそれぞれ東京・上海で開催された抗日戦争80周年の国際学会にて発表した。【3】冀東政府の構想。冀東防共自治政府内部での構想について、殷汝耕及び池宗墨の議論に注目することで検討を行った。この成果は2018年3月にワシントンで開かれたAssociation for Asian Studies(AAS) の年次会議にて“Chi Zongmo (1890-1951), a Confucian Collaborator in Hebei”として報告した他、雑誌『東洋史研究』に論文を投稿した。【4】『中華日報』社説目録作成。汪政権の機関紙『中華日報』の社説目録を作成し、1943年8月から1945年8月までを「『中華日報』社説目録(3)」として纏め、解説と共に『明大アジア史論集』22号に掲載した。【5】高橋和巳の歴史認識。戦後日本を代表する作家の一人である高橋和巳が、実は同世代としては珍しく中国占領地及び対日協力者について関心を抱いていた点に着目し、その背景を戦後日本社会の動向と対比させながら検討した。成果は論文集『高橋和巳の思想と文学(仮題)』(2018年発行予定)へ投稿した。
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