研究課題/領域番号 |
15J05359
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
樋田 浩一 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 遅延聴覚フィードバック / 身体性 / 認知科学 / 時間知覚 / 脳活動計測 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
我々は、外界からの情報を受動的に感知するだけではなく、能動的な身体運動とそれに伴う感覚フィードバックとを対応付けることで、自らと外部環境の関係性を構築している。この際、身体運動と感覚フィードバックを正しい組み合わせで対応付ける条件として、両者の時間的整合性が挙げられる。しかし、実際の場面を想定すると、道具や楽器使用の場面などにおいて、音速の遅延や道具自体に内在する音が鳴るまでの遅延など、感覚フィードバックが遅れて到来する場面が考えられる。このことから、脳には異なる時刻に入力される感覚情報を同一のイベントとして対応付ける何らかの方略が存在すると考えられる。そこで本研究では、身体運動とそれに伴う聴覚刺激の統合処理に着目し、両者が時間的に不整合な環境における統合処理メカニズムを明らかにするため、心理・生理の両側面から実験的な検討を行った。 初年度に当たる平成27年度は、身体運動に伴う遅延聴覚フィードバックがどのように知覚認知処理をされているかを明らかにするため、事象関連電位に着目した脳活動計測を中心に実施した。1) 身体運動に伴う聴覚刺激の知覚認知処理に関連して惹起される事象関連電位は、周波数逸脱刺激検出時と遅延逸脱刺激検出時では異なることを確認した。両者の違いから、周波数弁別と遅延検出は異なる脳内処理プロセスを有することが示された。2) 複数の遅延幅を持つ聴覚刺激を提示した結果、遅延の大きさと相関を示す事象関連電位成分を同定した。また、200ms遅延と300ms遅延の間を境とし、異なる振る舞いの事象関連電位成分を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体運動と聴覚刺激の統合認知プロセスの解明を目指した2ヶ年の研究のうち,研究初年度である平成27年度は、身体運動に伴う遅延聴覚フィードバックの検出に関連して惹起される事象関連電位成分の同定を行った。実験の結果、挿入した遅延の大きさと相関を示す成分が確認された。遅延検出に関連にした事象関連電位の同定は、本研究課題の根幹をなす知見である。一方で、200ms遅延と300ms遅延を境にして振るまいが異なる成分についても確認された。このことは、200ms~300msの遅延までならば外部システムの遅延に適応できるとする先行研究の結果との関連も示唆しており、今後更なる特性の把握が必要である。以上のことから本研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
身体運動と聴覚刺激の認知メカニズムについて更なる検討を行うため、当初の計画通り、平成28年度は、身体運動に先行して聴覚刺激が提示される環境における事象関連電位の測定を行う。その為に,以下の項目に取り組む。1) 身体運動に先行して聴覚刺激を提示するための実時間身体座標計測・聴覚刺激出力システムの開発。2) 身体運動と聴覚刺激の主観的同時点を算出するための行動心理実験。3) 身体運動に先行して聴覚刺激を提示した際の事象関連電位の測定実験。以上を通じ、身体運動と感覚刺激が時間的不整合な環境において、フォワードモデルを更新する学習信号の脳活動の同定を試みる。
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