研究課題/領域番号 |
15J05406
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
谷口 雄太 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(PD) (80779934)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 足利一門 / 足利氏 / 吉良氏 / 高氏 / 儀礼 / 島津氏 / 源頼朝 / 末裔 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(a)足利一門とは誰のことか、(b)足利一門であるとはどういうことか、(c)足利一門になるとはどういうことかなどの問題につき、全国的・総合的見地から検討を行い、もって中世後期の足利一門総体につき十分な理解を得ることにある。今年度はその初年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。 第一に、(a)に関し、国際日本文化研究センター共同研究会で「中世における吉良氏と高氏」を、静岡県地域史研究会で「「名和慈冬」は存在したか」を、関東足利氏研究会で「足利持氏の妻と子女」をそれぞれ報告した。どれも足利一門=足利流+新田流+吉見氏との再定義(拙稿「足利一門再考」『史学雑誌』122編12号、2013年)に基づいた基礎研究である。日文研で報告したものは『新編西尾市史研究』2号に掲載された。 第二に、(b)に関し、史学会大会で「中世後期武家社会における足利一門の儀礼的優越」を報告し、「書評 木下昌規『戦国期足利将軍家の権力構造』」が『史学雑誌』125編3号に掲載された。前者は中世後期武家社会において、足利一門が非足利一門に儀礼的に優越するとの認識を将軍・幕臣側のみならず、大名・地方武士側からも検討したものである。これにより当該期武家の共通認識を明らかにし、そうした共通認識によって足利氏を中心とする武家の秩序(足利的秩序)は維持されたと見通した(『史学雑誌』125編1号に要旨が掲載済)。後者は権力の点から戦国期将軍の再評価を図る近業に対し、将軍存立の問題は権威・共通認識の点から考えるべきとしたものである。 第三に、(c)に関し、「中世後期島津氏の源頼朝末裔主張について」が『戦国史研究』71号に掲載された。これは島津氏が源頼朝末裔を主張したことにつき、足利一門=源義国流+源為義―義朝流との再定義に基づいて、島津氏は武家のステータスだった足利一門化を喧伝したかったとの仮説を提起したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は後半に学会が続き、翌年度予定分まで先取りして研究を行った。他方、本来今年度予定していたことが遂行できず、翌年度に延期しなくてはならなくなったこともあったが、総じて、複数の学会報告・論文発表を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
新田氏=「足利庶流」という認識はいつ・いかなる状況で新田氏=「源氏嫡流」へと変化したのか。またその背景は何か。この問題を考察すべく、まずは新田氏がいかなる存在と描かれていたのか、中世後期~近世初頭の古記録・古文書・禅籍・典籍等の中から悉皆的に検出し、整理することを目指す。なお、背景としては『太平記』の存在とその受容を想定しているため、中世後期の『太平記』享受史についても検討したい。本研究については、年度中は事例の収集を図り、次年度の活字化を目指す。
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