本研究の目的は、中世後期の足利一門総体につき十分な理解を得ることにある。今年度はその第3年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。
第一に、足利氏・足利一門総体に関し、歴史学研究会大会で「足利時代における血統秩序と貴種権威」を報告し、『歴史学研究』963号に掲載された。また、「中世後期武家の対足利一門観」が『日本歴史』829号に掲載された。いずれも、足利氏を頂点とし、足利一門を上位とする中世後期武家の儀礼的・血統的秩序の形成・維持・崩壊過程について検討したものである。
第二に、足利一門個別に関し、①「中世後期における御一家渋川氏の動向」が戦国史研究会編『戦国期政治史論集』西国編(岩田書院)に、②「今川氏と「足利一門」「吉良一門」」が大石泰史編『今川氏年表』(高志書院)に、③「足利成氏の妻と子女」が黒田基樹編著『足利成氏とその時代』(戎光祥出版)にそれぞれ掲載された。①は渋川氏の基礎的研究。②は今川氏の自他認識を足利一門・吉良一門をキーワードに考察したもの。③は関東足利成氏関係の基礎的研究。他に、書評類として「書評と紹介 松島周一著『鎌倉時代の足利氏と三河』」(『日本歴史』830号)・「書評 亀田俊和著『観応の擾乱』」(『週刊読書人』3208号)・「遠州飯尾氏は「両属」国衆か」(『静岡県地域史研究会報』213号)を書き、一般向け記事として「足利尊氏」(『南北朝』洋泉社)・「足利一族」(『足利将軍15代』洋泉社)・「関東吉良氏とその時代」(『世田谷往古来今』世田谷区)を認めた。なお、『世田谷往古来今』に関し、刊行後、拙稿部分を確認したところ、校正指示に従っておらず、内容改変もある等、種々の問題が見られた。また、コラムの一部には学術的・掲載媒体的に疑義のあるものがある。注意されたい。
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