前年度までに行った解析により、In vitro で乳癌細胞と培養した脂肪細胞がCancer Associated Adipocytesへと性質変化することを確認した。また、マイクロアレイ解析によって癌細胞では脂肪細胞との相互作用によって乾癬マーカーでもあるS100A7、及び新たなアディポカインとして着目されているLCN2がエストロゲン受容体(ER)の有無に関わらず増殖、遊走、及び浸潤能などにおいて重要な役割を担っていることを明らかにした。 更に、これらの因子は実際に脂肪組織への浸潤が認められたヒト乳癌組織の凍結切片を用いたPCR解析でも、正常乳腺上皮細胞と比較して過剰発現することが認められ、これまでに示した約150症例を対象とした免疫染色の結果と合わせてIn vivoでも癌脂肪相互作用におけるS100A7及びLCN2の重要性を改めて証明することができた。 一方、ER陽性乳癌では内因性エストロゲン受容体活性物質である27- hydroxycholesterol(27HC)の合成酵素である CYP27A1 の発現上昇が癌間質脂肪細胞において認められたことから、局所的な27HC産生がERの活性化を促進することにより、ER依存性乳癌増殖に寄与している可能性を示した。 以上の結果から、乳癌微小環境において癌間質脂肪細胞は近傍癌細胞とのシグナル伝達を介して早期乳癌の浸潤促進や予後不良など、重要な役割を担っていることを明らかにすることができた。 これらの結果をもとに、統合メタボローム解析を行う対象となるヒト由来癌間質脂肪細胞の収集、及びCAAの作製を共培養により異なるサブタイプの乳癌細胞を用いて行っている。
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