研究課題/領域番号 |
15J05451
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 卓也 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | メタマテリアル / ナノインプリントリソグラフィ / 超微細構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、可視光領域にて特異的な光学特性を有するメタマテリアル光学素子の創製に向けて、100ナノメートル以下の金属構造体の作製および積層化に着手している。本年度は、下記の2点における成果が得られた。 1.光ナノインプリントリソグラフィ法による超微細金属構造体の作製 光学特性は素子を構成する一つ一つの金属構造体の形状に大きな影響を受けるため、理想的な光学特性を得るためには100ナノメートルサイズ以下の構造体を高精度に作製することが求められる。本研究では、ナノインプリントによって成形した光硬化樹脂をドライエッチングマスクとして金薄膜を加工することにより金構造体を作製する手法を採用している。当研究グループは、エッチング比の大きな2種類の光硬化樹脂を用いたリバーストーンプロセスによるドライエッチング手法を開発し、100ナノメートルサイズの金属構造体を高精度に作製する手法を見出した。また、超微細構造体作製に向けた異方性ドライエッチング装置の開発を行い、光ナノインプリント後の構造体の下部に生じる残膜を均一に除去するエッチング条件を実現した。 2.理論計算による金属構造体の隣接距離が光学特性に与える影響の検討 積層化による3次元集積化では、金属構造体の積層間距離が光学特性に影響を与えるため、特異的な光学特性を実現するための積層条件を見出す必要がある。当該年度においては、積層間距離や金属構造体の相対的な位置関係が光学特性に与える影響を明らかにし、積層プロセスに求められる位置合わせ精度等を明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、特異的な光学特性を発現するメタマテリアル光学素子の作製に向けて、金属構造体同士の相対的な位置関係が光学特性に与える影響を理論計算により検討した。積層される1層目と2層目の金属構造体の距離が50ナノメートル以下となるときに、単層では発現しない光学特性を示す事が明らかとなった。また、積層時の位置合せ精度に由来する1層目と2層目の金族構造体の位置関係が光学特性に与える影響も判明しつつある。実験的実証によるフィードバックを行い、積層構造の最適化を検討する。 金属構造体の作製では、当研究グループが新たに開発したドライエッチング装置を用いて100ナノメートルサイズ以下の超微細構造体を形状変化なく作製できることを見出した。単層での金属構造体の作製における当該研究成果については学術誌へ投稿中である。 3次元集積化では、100ナノメートルサイズ以下の位置合わせ精度技術を有する積層プロセスを提案した。特殊な装置を利用せずに実現可能であり、かつ自己組織的に位置合わせを行う本手法は新規性・独自性を有するものである。現在、実験的実証により位置合わせ精度の検証を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題について次に示すように研究遂行を行う。 1.積層手法の確立と位置合わせ精度の検証 100ナノメートル以下の位置合わせ精度を目標とし、提案した積層手法により積層構造体の作製を試みる。位置合わせ精度の検証には、金属構造体同士の位置関係からだけでなく、位置合わせ精度検証マークを金属構造体を有する同一平面内に新たに配置し、顕微鏡観察等による数値的な解析を行う。 2.金属構造積層体の光学特性評価と理論計算値との比較 積層化により得られた金属構造体の光学特性を偏光透過スペクトルや位相干渉計を用いて評価し、金属構造体の相対的な位置関係が光学特性に与える影響について検討する。また、理論計算により得られた、積層構造体に由来する特異的な光学特性の発現可能性についても詳細に検討する。実験的実証および理論計算における相互的なフィードバックを行い、メタマテリアル光学素子としての積層構造の最適化を図る。
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