研究課題
軽量かつ高強度な材料であり,航空機などの構造材料として適用が拡大しつつある炭素繊維強化プラスチック(CFRP)およびガラス繊維強化プラスチック(GFRP)に発生した損傷を検出するための非破壊検査技術の開発を行う.CFRPとGFRPに対して有効な渦電流探傷試験という検査法の適用を試みた.CFRP検査では,材料が衝撃を受けることによって発生する層間剥離の検出を行った.電磁誘導加熱により材料を加熱し,層間剥離部が高温になること,さらに,高温部では導電性が局所的に異なることを利用し,アレイ状の渦電流センサで導電率分布を測定することではく離部の検出を行なった.誘導加熱と導電率測定を同時に行うための渦電流センサをエッチングにより作製した.作製したセンサを用いて実験を行ったところ,層間剥離部のみ検出信号が異なることが判明し,このデータに統計的診断法を導入することで良品と不良品の判別が行えることを示すことができた.一方,GFRP検査では,損傷部と健全部の誘電率の差異を検出することで検査を行う手法を考案した.まず,材料の誘電率を測定可能な渦電流センサの構成を電磁場の解析式を導出することで検討した.考案したセンサ構成のプローブを実際に作製し,GFRP内部のフラットボトムホールを検出可能であるかを調べる基礎実験を行った.実験により,GFRP内部の欠陥がある位置においてセンサ信号の明瞭な変化がみられることがわかり,誘電率の差異から損傷検出ができる可能性があることを示した.
1: 当初の計画以上に進展している
CFRP検査,GFRP検査ともに,研究計画を立てた当初から想定していた測定原理で非破壊検査ができている.いずれの場合も試験装置の都合上小型の試験片のみに対して有効性が示されているにとどまっているが,実験的に手法自体の有効性を示すことができている.また,実験と合わせて有限要素法解析を用いた電磁場解析を新たに始めたところ,提案した測定原理の物理的な背景を確認することができ,当初の計画以上のスピードで進捗している.
これまでのCFRP検査では薄板のみに対して手法の有効性が実証されているが,航空機材料の検査などを考えると厚い板の検査も可能となることが求められる.電磁誘導加熱で温度差を生じさせる本手法は厚板になると検出性能が著しく悪くなることがわかっており,これを克服するような加熱方法あるいは信号処理方法を考案することが必要となると考えている.GFRP検査においても,検査可能な深さの評価及び向上が重要となる.今後はセンサ構成と検査可能深さの関係の調査とともに,実構造の板厚で検査法が適用できるかなどを検討する予定である.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Composites: Part B
巻: 86 ページ: 84-94
10.1016/j.compositesb.2015.09.041
Composites: Part A
巻: 82 ページ: 109-118
10.1016/j.compositesa.2015.11.040
NDT & E International
巻: 74 ページ: 24-32
10.1016/j.ndteint.2015.04.005
Advanced Composite Materials
巻: available online ページ: 1-17
10.1080/09243046.2015.1052132
巻: 74 ページ: 106-111
10.1016/j.ndteint.2015.05.009
実験力学
巻: 15 ページ: 200-204
10.11395/jjsem.15.200