研究課題/領域番号 |
15J05477
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
鎌田 紗弓 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 囃子 / 歌舞伎 / 鳴物 / 音楽構造 / 音楽演出 |
研究実績の概要 |
本年度は、出囃子・陰囃子双方の音楽実態に関するデータを蓄積し、研究を進展させることを重視した。 陰囃子については、まず前期に「陰囃子総合付帳私案」(横道;石橋;金子;龍城ほか 1999-2008)などの先行研究を精読し、国立劇場公演録画資料などを閲覧して【天王立】の分析を試みた。この分析の成果は、『音楽文化学論集』第7号に掲載された。この作業により、博士論文における「劇進行との対応の分析」でとりあげる演目・段、記述の案を具体化することができた。後期からは録音資料(『歌舞伎下座音楽集成』、『舞踊鳴物選集』第1集・第2集、『舞踊鳴物百選(黒みす)』上下、研修用録音『歌舞伎囃子』)における手配リの調査に重点を置き、音楽構造の分析およびその形成要因の考察を継続している。このほか、江戸後期の重要な史料「芝居囃子日記」に関する共同発表を通して、戦後行われた写本検討への囃子方の関与や、時代背景についての理解を深めた。 出囃子については、基本の調査対象とした囃子手法(序ノ舞/神舞/中ノ舞/羯鼓/出端/下リ端/早笛)を用いる長唄約30曲について、譜や録音から複数曲における手配リのバリエーションの調査・比較検討を進めた。あわせて、『能楽図説』(横道; 1992)における能楽諸流の手組の分類を参考にしながら、頻出する手組をリスト化した。蓄積された複数曲のデータの比較からは、歌舞伎においては単に音楽構成が短くされるのみならず、楽曲の用途や楽器編成もふくめて臨機応変に組みかえられ活用されることが読みとれる。このような歌舞伎独自の工夫について、陰囃子の成果と併せて「歌舞伎化」をキーワードとする研究発表を行い、傾向を整理した。年度末には、International Musicological Society (IMS)にて、特に出囃子の音楽構造についての口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各機関所蔵の音源・映像の閲覧を重ね、前年度末に課題として挙げた「演出」段階の分析・考察を含む成果報告を行った。これにより、扱う演目・囃子の選択や、手組―手配リ―演出の各段階への重点の置き方など、博士論文執筆に向けた方策をより詳細に練ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
楽曲分析が進展するにつれ、現在の音楽的特徴が形成されるにいたった歴史的背景として、近現代における歌舞伎囃子の状況を改めて整理しておく必要があると認識されてきた。これをふまえ、次年度は博士論文のとりまとめに向けて、まず歴史面を考察に取り込んだ形での章構成を再考する。その上で、音楽演出の分析を進め、これまで手組―手配リ―演出の各段階について個別的に挙げてきた成果を総括していく。 なお音楽演出をとりあげる用例としては、本年度の分析対象とした【天王立】を含む時代狂言『仮名手本忠臣蔵』のほか、『京鹿子娘道成寺』・『春興鏡獅子』といった舞踊演目を予定している。
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