研究課題/領域番号 |
15J05492
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
佐々木 桂奈江 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
ゴルジ体ストレス応答とは、ゴルジ体の処理能力を超える事態に対して、能力を増強することで恒常性を維持する、細胞の生命活動に必須の適応機構である。所属研究室では、N型糖鎖修飾酵素の発現制御を行うストレス応答経路を明らかにしつつあるが、ゴルジ体ストレス応答の全容については未だ不明である。ストレス誘導剤の種類によって応答する遺伝子群の種類も異なってくることから、ゴルジ体ストレス応答には複数の経路が存在することが推察された。 小胞体と同様にゴルジ体にも高濃度のCa2+がストックされており、Ca2+は翻訳後修飾や輸送など、ゴルジ体の機能に重要な役割を果たしている。そこで本研究では、ゴルジ体内のCa2+を枯渇させることにより発生したストレスに対する応答の新規経路解明を目的とし、以下の実験を行った。 ゴルジ体内のCa2+枯渇によるストレスを誘導するため、ゴルジ体のCa2+ポンプSPCA1阻害剤のbis-phenolをHeLa細胞に添加し、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現解析を行った。Rを用いた発現比較解析を行い、有意に発現の上昇がみられる遺伝子群を抽出し、さらにその中からゴルジ体に局在するタンパク質や機能に関わるタンパク質をコードする遺伝子群を再抽出した。 次に抽出した候補遺伝子の中から、HeLa細胞においてある程度発現量の多いものを選び、qPCRを用いてbis-phenol処理による発現上昇を確認した。所属研究室では、ゴルジ体ストレス応答経路においてN型糖鎖修飾酵素などの発現制御を担う転写因子TFE3を同定している。発現上昇を確認した遺伝子のうち4遺伝子について、TFE3発現抑制条件下でbis-phenolによる発現誘導を調べたところ、TFE3非依存的に発現上昇することが判明し、これまでに同定したストレス応答経路とは異なる新規経路により制御されている可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行するために、一年目に網羅的遺伝子発現解析によるストレス応答遺伝子の抽出、二年目にその転写制御配列及び転写因子の同定、三年目にさらなる上流経路の解析を行い、ゴルジ体ストレス応答の新規経路の全容を明らかにする予定であった。 今年度は当初の予定通り、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、ゴルジ体に局在するタンパク質や機能に関わるタンパク質をコードする約20の遺伝子を抽出することができた。さらに、この内の4遺伝子については、小胞体ストレス応答やゴルジ体ストレス応答の既知経路に対する非依存性を確かめ、現在はプロモーター解析を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
ゴルジ体内のCa2+枯渇によるストレスに応答して発現する遺伝子のエンハンサー配列を同定するために、発現の上昇が確認された遺伝子それぞれについて、転写開始点から上流1 kbp以内の領域をレポーターであるルシフェラーゼ遺伝子につなぎ、それらの欠損・置換変異コンストラクトを導入したHeLa細胞でルシフェラーゼアッセイを行い、プロモーターを解析する。 次に、同定したエンハンサー配列に結合する転写因子を同定するために、酵母one hybrid法を行う。同定したエンハンサー配列をレポーターであるヒスチジン合成酵素遺伝子(HIS3遺伝子)につなぎ、ヒトcDNAライブラリーと共にhis3欠損酵母細胞にトランスフェクションし、ヒスチジン不含培地で培養する。エンハンサー配列に結合する転写因子をコードするcDNAがトランスフェクションされた酵母細胞ではHIS3遺伝子の転写誘導が起こるため、増殖が観察された酵母細胞からcDNAを抽出し、シークエンス解析により転写因子を同定する。この方法で同定できない場合は、エンハンサー配列を用いたプルダウンと質量分析を組み合わせた方法により、結合する転写因子の探索を試みる。 さらに、同定した転写因子の活性を制御する様々な仕組みについて調査する。ストレス応答によって転写因子が核へと移行する可能性があるため、細胞内局在の変化を調べる。リン酸化の有無、切断など、翻訳後のプロセシングにより制御されている可能性を考慮し、分子量の変化を調べる。非ストレス時には常に分解されているが、ストレス応答により分解が阻害されるなど、存在量で制御されている可能性を考え、存在量の変化をタンパク質レベルではWestern blottingにより、mRNAレベルではリアルタイムPCRにより調べる。上流に向かって解析していくことにより、最終的にゴルジ体ストレスセンサーを同定する。
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