研究課題/領域番号 |
15J05519
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山岸 由佳 千葉大学, 融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | Actin / Tubulin / MTOC-TMA / Oocyte maturation / Xenopus laevis |
研究実績の概要 |
本研究は異なる二つの細胞骨格であるアクチンフィラメント、微小管繊維間をつなぐクロストーク因子の探索を目的としている。平成27年度は、実験材料であるアフリカツメガエル卵母細胞の卵成熟過程における微小管とアクチン繊維の動態の観察により、相互依存的な局在制御機構が存在することを確認し、研究成果を公表した。 アフリカツメガエル卵母細胞の卵成熟過程では、核崩壊直前時期に核の植物極直下の細胞質にアクチンフィラメントが蓄積し、同部位に微小管繊維も蓄積することでMTOC-TMA (microtubule organizing center and transient microtubule array)が形成される。またアクチンフィラメントの切断脱重合を行う因子であるXenopus ADF/cofilin (XAC)はこのMTOC-TMA基部より排除されていることをこれまでに見出してきた。平成27年度はXACの活性化を担うXenopus Slingshotに対する抗体を注入したXACの活性抑制実験、及び恒常活性型cofilinの注入実験を行い、アクチンダイナミクスの攪乱は、微小管繊維の局在にも影響を与えることを見出した。反対に、MTOC-TMA形成時期にNocodazoleによって微小管繊維を消失させた場合、アクチンフィラメントの局在も乱されることが分かった。このことは、MTOC-TMA基部において、アクチンフィラメント及び微小管が相互依存的に局在を制御しあっていることを示唆している。これらの研究結果については、国際誌に論文を投稿するとともに(Yuka Yamagishi and Hiroshi Abe, MBoC, 2015)、国内学会において口頭及びポスター発表により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、アフリカツメガエル卵母細胞の卵成熟過程における卵母細胞内アクチンフィラメント及び微小管繊維の動態及び相互依存性について公表した。また研究計画に則し、卵成熟過程におけるアクチン-微小管間クロストーク因子の探索を行い、現在までにその候補となる因子を見出し、解析を進めている。 クロストーク因子の探索に当たっては、Halo Tag fusion tubulin及びutrophinのコンストラクトを作成し、mRNAを合成した。これを卵母細胞内に発現させ、Halo Tagビーズで精製することで卵母細胞内における微小管及びアクチンフィラメントに結合する因子の探索を行った。SDS-PAGEの泳動パターンより、クロストーク因子として可能性があるものについて質量分析を行ったところ、その中にアクチンフィラメントの重合と分枝に寄与するArp2/3コンプレックス内の一因子が存在することが分かり、現在解析を進めている。 また、現在までに報告されているアフリカツメガエル卵母細胞内クロストーク因子であるNabKin及びMyosin Xの抗体作成を試みた。NabKinについては抗体の作成が完了し、過去の報告同様MTOC-TMA基部に局在することを確認した。またMyosin X抗体の作成については成功していないものの、Myosin Xの微小管繊維相互作用ドメインであるMyosin Tail Homology 4 (MyTH4) ドメインを抗原としたところ、卵母細胞の70kDa付近のタンパク質(p70)と特異的に反応する抗体が得られた。このドメインは微小管と結合することが報告されているとともに、これを持つタンパク質の多くはアクチン相互作用ドメインを持つ。そのため卵成熟過程においてMTOC-TMA形成に寄与する可能性があり、現在p70の卵成熟過程における機能の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.アフリカツメガエル卵成熟過程におけるアクチンフィラメント―微小管の動態は凍結切片により観察を行ってきた。しかし、核崩壊から紡錘体形成までのダイナミックな細胞内動態を捉えるためには、ライブイメージングが欠かせない。そのためライブイメージングの観察系確立を目指す。現在までミネラルオイル下で卵内部を露出させ、核を観察する手法の確立を試みてきたが、この時リン脂質を添加することで一定時間卵内部の形態を保つことが可能だと分かった。今後はリン脂質の種類及び量を調整することで、卵内を暴露した条件下でMTOC-TMA形成を観察できる観察系を確立したい。 2.アクチン‐微小管クロストーク因子として、現在二つの候補を見出している。これらについては、今後in vitroにおけるペレッティングアッセイを行うことで、アクチンフィラメント及び微小管との結合性を明らかにする予定である。 また、初めに質量分析によって見出された因子については、現在ライブラリからのクローニングが完了し、GFP融合タンパク質として卵母細胞内に発現させることでin vivoにおける機能解析を試みている。しかし、過剰発現系における影響のみでは機能を論じることはできないため、今後はアンチセンスオリゴの注入により機能阻害を行うことでこの因子の機能を明らかにしていく予定である。一方MyTH4ドメインを持つと考えられる候補因子については、抗体を用いたアフィニティー精製を行い、質量分析を行うことでその正体を明らかにし、機能解析を行いたい。またMyosin Xの抗体作成については抗原部位を変え、その作成を試みる予定である。
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