研究実績の概要 |
アフリカツメガエル卵母細胞の卵成熟過程において、microtubule organizing center and transient microtubule array (MTOC-TMA)の形成及び構造維持には、アクチンが深く関わっている。本研究の目的は、MTOC-TMA形成における微小管―アクチンフィラメント間のクロスリンク因子を明らかにし、その動態をイメージングすることである。昨年度までの研究からクロスリンク因子の候補としてWASHが見出され、本年度はこのWASHの機能の詳細について解析し、論文にまとめた。 WASHは分枝型のアクチン重合を促進するArp2/3 complexの活性化を行うWiskott-Aldrich syndrome (WAS)タンパク質ファミリーの一つであり、WHD2ドメインにより微小管と相互作用する可能性がヒトWASHを用いた研究により報告されていた。また、アフリカツメガエル卵母細胞でWASHのノックダウンを行うと、MTOC-TMA基部におけるアクチン及び微小管の整列が乱れた。そのため各ドメインを用いた微小管との共沈実験を行った結果、アフリカツメガエルWASHにおいては、WHD2ドメインではなくVCAドメインが微小管と強く結合することが示された。更に、WHD2ドメインを欠損させたWASHの発現は、細胞質における異所的なアクチン重合を引き起こし、WHD2ドメインの過剰発現はWASHのノックダウンと同様の結果を示した。以上のことから、アフリカツメガエルWASHはMTOC-TMAの形成に関わることが予測された。一方ヒトWASHとは異なり、アフリカツメガエルWASHはVCAドメインで微小管と結合し、WHD2ドメインは機能制御ドメインとして機能する可能性が示された(Yamagishi and Abe, Cytoskeleton, 2018)。
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