研究課題
銀河団は数百個の銀河が重力的に束縛された、宇宙最大の天体である。銀河間は重力によって数千万度に加熱された高温ガスで満たされており、X線を放射している。日本の5番目のX線天文衛星「すざく」は、欧米のX線衛星に比べて検出器夜来のノイズが小さいため、銀河団の勢力範囲付近からの微弱なX線放射も検出することができる。これにより銀河団高温ガスの温度や密度分布を銀河団の勢力範囲まで測定できるだけでなく、高温ガスに含まれる鉄の総質量を測定することが可能となった。前年までの研究で巨大な銀河団は単位銀河光度あたりの高温ガス中の鉄質量が一定だったが、より小さい天体である銀河群は単位銀河光度あたりの高温ガス中の鉄質量が銀河団に比べて小さいことがわかった。これは銀河群は銀河団に比べて高温ガスを集めることができなかったことを示唆する。本年度は銀河群が高温ガスを集められなかった理由を明らかにするため、高温ガスのエントロピーを測定した。銀河団高温ガスのエントロピーは温度と密度により定義されるパラメータで、温度よりも銀河団の熱的な歴史を反映している。銀河群は重力のみを考えたエントロピーよりも高い値をもった。また、単位銀河光度あたりの鉄質量は規格化したエントロピーと逆相関があった。これらの結果から、銀河群は銀河団に比べて相対的に重力以外の加熱を強く受けており、高温ガスを重力で束縛できなかったという銀河団と銀河群の熱史の違いが明らかとなった。また、銀河団は銀河や銀河群が降着合体することで成長してきたと考えられているが、合体した銀河群がどのように銀河団の高温ガスに溶け込むのかはわかっていない。本研究は銀河団に合体中の銀河群周辺の温度構造を調べた。その結果、銀河群の進行方向に加熱された高温ガスが分布していること、銀河群の高温ガスの大半がすでに剥ぎ取られていることなどが明らかとなった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 68 ページ: 1, 15
10.1093/pasj/psw078