研究課題/領域番号 |
15J05654
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齊藤 雅嵩 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 一分子蛍光分光測定 / FRET / ライン型共焦点顕微鏡 / タンパク質の吸着 / タンパク質の折り畳み |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質の折り畳みのダイナミクスを、ライン型の共焦点顕微鏡を用いた一分子蛍光分光測定により観測した。76 残基の小さなタンパク質であるユビキチンの変異体に二種類の蛍光色素を標識し、FRET測定によりその構造の変化をとらえた。一分子蛍光分光測定装置とマイクロ流路ミキサー、さらに温度可変可能な機構を組み合わせることで、これまでに詳細に観測することができなかった早い折り畳みダイナミクスを測定することができる。 本年度は、これまでに測定において問題となっていた蛍光標識試料の吸着問題に取り組んだ。本研究の一分子蛍光分光測定装置はライン型の共焦点顕微鏡と試料供給システムから構成されている。一分子測定では、”希薄な試料溶液”、”微小空間での測定”が必須となる。そのため、バルクでの実験と異なりタンパク質試料の壁面への吸着が問題となる。吸着問題は見かけの試料濃度の低下だけでなく、再現性を低下させることも引き起こしていた。 そこで、より再現性の高いデータを得るために試料の吸着抑制に取り組んだ。(1)牛血清アルブミン(BSA)の添加、(2)脂質二重膜による試料の封入、(3)MPCポリマーの化学修飾による試料供給システム内壁面の親水化を試みた。 その結果、(3)の方法によりのみ試料の吸着問題が大きく軽減され、再現性の高い一分子測定データを得ることができた。流路内をMPCポリマーで修飾することで数十 pMの低いタンパク質試料濃度での測定が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高速溶液混合実験と温度可変システムの開発を行う予定であったが、試料供給システムにおけるタンパク質の吸着が問題であることが分かった。本年度は、吸着問題の改善を行ったため、予定より遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質の吸着抑制のための一分子蛍光分光測定システムの改良を達成することができた。今後、マイクロ流路ミキサーと組み合わせた速度論的な一分子蛍光分光測定を行う。平衡状態では稀にしか起こらない折り畳み・変性の遷移を、素早い溶液混合によって高い頻度で観測できる可能性がある。 また、ペルティエ素子を利用して試料供給システムを温度可変可能にし、低温条件下でのタンパク質の構造ダイナミクスの観測を目指す。反応速度を劇的に低下させることができ、常温では観測が難しい変性状態内のダイナミクスの直接観測が期待できる。
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