研究実績の概要 |
中世北欧においてキリスト教信仰確立の要因の一つと考えられる国王聖人崇敬の拡大について特にノルウェーのオーラヴ2世(聖オーラヴ、在位1015-1030年)を事例として取り上げ、その実態に迫る研究において、本年度は特別研究員奨励費に関する申請書の研究実施計画に記入した内容に即して研究を進めた。具体的には研究課題として設定した「11~13世紀のノルウェー大司教管区の動向とニダロス巡礼の事例研究」について、先行研究を網羅し、並行して国内で入手可能な史料であるAdam of Bremen, Gesta Hammaburgensis ecclesia pontificum, Scriptores rerum Germanicarum in usum scholarum separatim editi 2, Hannover, 1846、聖オーラヴの聖人伝であるMetcalfe, Frederick(ed), Passio et miracula beati Olaui: edited from a twelfth-century manuscript in the Library of Corpus Christi College, Oxford, 1881の分析を行った。結果、1150年代に大司教座を獲得し、大司教エイステインによって聖オーラヴ崇敬が称揚されていく過渡期までのノルウェー国内外からの巡礼者の様子・巡礼の行程などが明らかになった。これらの成果はニダロス巡礼が広汎な地域から信徒を招集していたことを明らかにする上で重要である。また、ノルウェーのオスロ・トロンハイム(2016年2/3月)において合計10日間の史料・資料収集を行った。具体的には聖オーラヴ崇敬に関する木造などの図像資料、ローマ教皇庁とニダロス大司教の書簡数点である。論文の形での研究発表は来年度以降に行う。
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