研究課題/領域番号 |
15J05681
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
邊見 昌久 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ワクチン / アデノウイルス / ウイルスベクター / 自然免疫 / インターフェロン / Th17 / CTL / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
本研究では、アデノウイルスベクター(Adv)ワクチン筋肉内投与後の腸管粘膜面への細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導において重要な細胞や分子を同定し、これらがより効果的で安全なAdvワクチンの開発に応用可能であることを示したい。これまでのI型インターフェロン受容体欠損(IFNAR2 KO)マウスを用いた検討により、Adv筋肉内投与後、I型IFNシグナルを介して腸管粘膜面へと17型ヘルパーT細胞(Th17)が誘導されることを明らかとしている。したがって、Adv筋肉内投与後の腸管粘膜CTLの誘導をTh17が促進している可能性が考えられた。これを調べるため、in vitroで分化誘導したTh17を尾静脈からIFNAR2 KOマウスに移植し、Adv筋肉内投与後の腸管粘膜CTLの誘導に影響が現れるかを検討した。その結果、Th17を尾静脈投与したIFNAR2 KOマウスでは、腸管粘膜CTLの誘導が野生型(WT)マウスレベルにまで回復した。このことから、Adv筋肉内投与後の腸管粘膜CTLの誘導において、I型IFNシグナルにより誘導されるTh17が重要な役割を果たすことが示された。次に、Th17誘導を亢進させることで、Adv筋肉内投与後の腸管粘膜CTLの誘導を増強することが可能であるかを確かめるため、in vitroで分化誘導したTh17を尾静脈からWTマウスに移植し、同様の解析を行った。その結果、対照群と比較してTh17を尾静脈投与したWTマウスでは腸管粘膜CTLが増加することが明らかとなった。以上、本研究から、ワクチン分野においてTh17が腸管粘膜CTLの誘導を増強するという現象を世界に先駆けて発見することができた。今回示された現象は、腸管粘膜面に獲得免疫を誘導するワクチンの開発において重要な知見となるものであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の結果を元に、研究を大きく進展させることができた。「研究実績の概要」で述べたTh17のin vitro分化誘導法とマウスへの移植条件の検討に想定以上に時間を要してしまったが、本研究テーマの遂行において基礎的かつ発展性のある重要な知見を得ることができた。この知見を足がかりとして、次年度はより発展的な研究に繋げることが可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討から、Adv筋肉内投与後に誘導されるTh17が腸管粘膜CTLの誘導を促進していることが明らかとなった。今後は、I型IFNシグナル下流のTh17誘導を促進させることで、腸管粘膜CTL誘導の増強を試みる。現在、Th17誘導を促進させるために二つのアプローチを考えている。一つ目は、Th17分化誘導サイトカインと抗原遺伝子を共発現する改良型Advワクチンの開発である。この改良型AdvワクチンによりTh17分化誘導サイトカインの発現を高めることで、直接的にTh17誘導を促進することが期待される。また、Th17誘導には適切な分化誘導サイトカインによる制御だけではなく、抗原提示細胞の働きも必須であると考えられる。ここに着目した検討により、Th17誘導に関わりうる抗原提示細胞サブセットおよびこの細胞の遊走を制御する特定のケモカインを見出している。そこで二つ目のアプローチとして、このケモカインと抗原遺伝子を共発現する改良型Advワクチンの開発も試みる。この改良型Advワクチンにより特定の抗原提示細胞を増加させることで、間接的にTh17誘導を促進できるのではないかと考えている。以上のようなアプローチを通して、本研究がより優れたワクチンやアジュバントの開発に繋がり、感染症予防の発展に貢献できるものと期待している。
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