本研究の目的は、各種架橋型人工核酸(BNA)を導入したSSOの最適な配列設計に関する知見を獲得する事である。本年度は主に以下2点の項目について、研究を実施した。 1点目は、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)モデル細胞の構築である。これまで、BNA導入SSOの活性評価は、DMD遺伝子断片の強制発現系を利用し、mRNAレベルでのみ実施してきた。今後タンパク質レベルにおいても評価する事を見据え、DMDモデル細胞の構築に着手した。DMD遺伝子由来mRNA並びにジストロフィンタンパク質を発現する事が確認された筋組織由来培養細胞株のゲノムDNAをCRISPR/Cas9システムにより編集し、DMD患者の遺伝子変異型を模倣した。ゲノム編集済みの細胞を限界希釈法によってシングルセル化し、遺伝子変異株をDMDモデル細胞として樹立した。続いてDMDモデル細胞において、既に報告されているSSOの活性を確認する事ができるか確認した。リポフェクション法を用いて、SSOをトランスフェクションした所、期待通りジストロフィンタンパク質の回復を確認できた。今後細胞株を用いて、BNA導入SSOのタンパク質レベルの活性評価を実施する予定である。 2点目は、LNA導入SSOの高次構造形成についての検証である。以前報告した論文において、LNA導入SSOの塩基長が増大する事に伴い、活性が低減する結果を得ていた。そこで、当該一本鎖SSOについて融解温度曲線実験を実施した所、シグモイドカーブを検出した。以上の結果は一本鎖SSOが分子間若しくは分子内の相互作用をしている可能性を示唆するものである。LNA以外のBNA類縁体についても、その対RNA結合能が非常に高いという特徴から、今後各種BNAをSSOへ適用する際には相互作用に留意する必要がある可能性を示す事ができた。
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