研究課題
本研究の目的は、ナノ粒子の胎児期曝露が子の中枢神経系に及ぼす影響とその機序の解明である。最終年度では「ナノ粒子の胎児期曝露により脳血管周辺にβ-sheet rich proteinが集積する要因の解明」を中心的な課題として取り組んだ。β-sheet rich proteinとして、①β-sheet構造を多分に含み、ナノ粒子の胎児期曝露により高発現したタンパク質、②胎児脳に移行したナノ粒子との相互作用により増加したタンパク質の構造変化体 の2つが想定された。網羅的遺伝子発現解析とタンパク質二次構造予測を用いて①の仮説を、脳の老廃物排出機構に基づいて組織学的解析を行うことで②の仮説を検証した。結果、タンパク質の構造変化体の集積によって誘導される小胞体ストレスの脳血管周辺での亢進が認められた。先行研究により、生体内に移行したナノ粒子はタンパク質の二次構造を変化させ、β-sheet構造を増加させること、脳内に存在するタンパク質の構造変化体は血管周辺に集積されることが報告されている。これらの知見と本研究の結果から、ナノ粒子の胎児期曝露は、子の脳血管周辺にタンパク質の構造変化体であるβ-sheet rich proteinを増加・集積させ、脳血管周辺の細胞群に小胞体ストレスやそれに伴う組織学的異変を誘導することが示唆された。この他にも、デンマークとの共同研究によりナノ粒子の妊娠期吸入曝露による子の脳機能への影響とナノ粒子の発達神経毒性に対する抗酸化剤の効果についても更に追究し、論文としてまとめた。以上の成果は、ナノ粒子の胎児期曝露に起因する中枢神経疾患の初期病変を捉えたとともに、その機序の解明に向けた基盤となる知見を提供したものである。本研究で示した知見は、より安全なナノマテリアルの開発や持続可能な利用法の確立に、大気中に浮遊するナノ粒子の健康影響の予測と予防に資するものと期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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