研究実績の概要 |
本課題では、自己免疫性関節炎発症の根幹である自己反応性T細胞の発生機構を明らかにすることを目指す。 胸腺におけるT 細胞レパトア制御機構の解明を目的とし、以下2つの側面から研究を行った。 【1】カルシウム結合タンパク質Efpによる胸腺細胞の分化制御:T細胞特異的Efp欠損マウスをTCRトランスジェニックマウスと交配し、胸腺におけるT細胞の正負の選択が正常に機能しているかどうかを検証している。T細胞特異的Efp欠損マウスの胸腺DP細胞にて、有意に発現増加した複数の遺伝子を同定し、各遺伝子のレトロウイルスベクターを作製した。胎児胸腺器官培養系にて遺伝子を導入し、DP細胞への分化誘導を試みる。本実験によって、T細胞の正負の選択に関わるT細胞レパトア制御因子を探索する。 【2】T細胞レパトア制御における翻訳後修飾の意義:TCR刺激に伴って発現上昇する、特定の翻訳後修飾酵素のT細胞特異的遺伝子欠損マウスの解析を行った。胸腺のDP, CD4SP, CD8SP細胞数は正常であったが、末梢のCD4およびCD8T細胞数が顕著に減少していた。末梢のCD4およびCD8T細胞にTCR刺激を誘導した結果、細胞増殖および生存が顕著に障害された。現在、胸腺細胞および末梢T細胞におけるTCRレパトアの解析を行っている。また、当該マウスの胸腺細胞におけるTCRシグナルが正常かどうか検証した。当該マウスでは胸腺および末梢におけるNKT細胞がほぼ欠失していた。 本研究は、T細胞レパトアの新たな制御機構を提唱するものであり、自己免疫疾患発症メカニズムの分子基盤の提供へと繋がる。
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