1.マウスES細胞を胃オルガノイドへと分化させる実験系を構築した。ES細胞の培養技術を習得し、まず、過去の報告を参考に、胚葉体から胚体内胚葉へと分化誘導をかけ、前腸部位を模すスフェロイドを作成した。それらのスフェロイドをマトリゲル内で培養することにより、オルガノイド様の細胞塊に成長することが確認された。また、これらの細胞塊を凍結切片にして観察したところ、胃上皮細胞と間葉系細胞・粘膜筋板を含む二つの層が出来ていることが確認された。胃上皮細胞は胃に特有とされるムチン、ムチン5ACと胃幽門部に分泌されるといわれているムチン6を産生する細胞が含まれた。 2.これらの胃オルガノイドの内腔側に胃上皮細胞にレンチウィルスベクターを用いてcagA遺伝子を導入、および液体培養したピロリ菌を導入した。12時間後の胃上皮細胞における形態変化を観察したところ、発がんタンパク質を発現するピロリ菌を導入したオルガイドに於いて激しい細胞の損傷が確認された。また、マイクロアレイ解析の結果、癌関連遺伝子の上昇を確認した。これらの損傷が具体的にどのようにして起こっているかを今後観察していきたいと考えている。 3.自然に発生した遺伝子組換えによって樹立された弱毒株と呼ばれるピロリ菌をオルガイドに導入したところ、2.でみられたような著しいオルガノイドの損傷がみられなかった。
|