本研究では、進行性骨化性繊維異形成症(FOP)モデル両生類の作製に向けて、ネッタイツメガエルにおけるCRISPR-Casシステムを用いたゲノム編集技術の開発を行った。 昨年度に引き続き、ゲノム編集効率を向上させるために、ヌクレアーゼであるCas9とsgRNAをRibonucleoprotein (RNP)として導入する実験を行った。遺伝子破壊の表現型評価が容易な遺伝子を標的とし、ネッタイツメガエル受精卵にCas9 RNPを顕微注入した。F0世代における変異導入効率を正確に算出するために、次世代シークエンサーを用いたアンプリコン解析法を確立した。この方法により、CRISPR-Casシステムを用いて作製した遺伝子破壊個体の標的ゲノム領域を解析したところ、体細胞変異率99%以上であることが分かった。以上の成果より、CRISPR-CasシステムのRNP導入は、ネッタイツメガエルにおいて高効率に標的領域へDNA二本鎖切断を導入できることが示され、ノックイン実験に適当だと判断した。 次に、確立したRNP導入法を用いて、ネッタイツメガエルalk2遺伝子領域に疾患変異型ヒトALK2 cDNAをノックインすることでFOPモデルツメガエルの作製を試みた。Cas9 RNPとノックインベクターを顕微注入した個体からジェノタイピング陽性F0個体を選抜し、性成熟したものから順次掛け合わせを行い、F1世代の作出を試みた。本年度内に、21匹の性成熟した成体が得られ、野生個体と人工媒精あるいはナチュラルメイティングによる掛け合わせを行った。得られた全21クラッチのF1世代個体について、PCRによるジェノタイピングを行ったが、標的領域へノックインは確認できなかった。FOPモデル両生類作製のためには、ノックインされたF1個体が得られなかった原因を明らかにするとともに、さらなる技術改良が必要だと考えられる。
|