研究実績の概要 |
本研究では、CXCR4を標的とするFRETアッセイ法に用いる競合プローブを開発するために、インバースアゴニストT140から誘導されたAc-TZ14011に対する蛍光ラベル化を行った。FRET acceptorに必要な蛍光吸収波長を有するcyanineの一種、DY647P1とfluoresceinの二種類を導入したAc-TZ14011誘導体をそれぞれ合成した。そして、lumi4-Tbは文献 (Raymond, K. N. et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 19900-19910.) に従い31段階で合成した。lumi4-Tbのアルキルアミン部位にリンカーを介してベンジルグアニンを導入した。一方、ベンジルグアニンを認識するSNAP-tagを遺伝子工学的手法によりCXCR4のN末端に導入し、哺乳類細胞上に発現させたのち、lumi4-Tb誘導体を細胞へ導入し、蛍光性Ac-TZ14011を添加した。蛍光プローブの濃度推移に伴うFRETの蛍光強度の飽和曲線を作製し、上述したプローブの解離定数値を算出したところ、それぞれ833, 343 nMという値であることがそれぞれ判明した。さらにfluoresceinでラベル化したAc-TZ14011を用いたアッセイ系においては、既知CXCR4リガンドであるFC131の結合活性を評価する際に低温条件でインキュベーションを行うことが重要であることが判明し、温度依存的なCXCR4の内在化の抑制が本アッセイ系を立ち上げる上での鍵であることが示唆された。つづいて、新規CXCR4低分子リガンドの創製に着手した。見出されていた高いCXCR4結合活性を有するSKA028の構造を基に、活性に大きく寄与するスペーサー部位を二環性芳香環へと変更することで、より高いCXCR4結合活性を示すリガンドの創製に成功した。
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