研究課題
申請者は、酸化ストレスにより凝集体を形成することが知られている解糖系酵素GAPDHに着目し、GAPDH凝集体がアルツハイマー病や脳卒中等の脳新家疾患発症における促進因子として働くという仮説の検証と、GAPDH凝集阻害をターゲットとした新規脳神経疾患治療法の開発を試みている。最終年度で得られた成果は以下の通りである。(1)前年度に明らかにしたGAPDH凝集阻害ペプチド GAI-Xの中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルにおける有効性をさらに詳細に検討し、以下の結果を得た。・側脳室内投与したGAI-Xは大脳皮質および線条体において、神経細胞特異的に取り込まれることが明らかとなった。・GAI-X側脳室内投与による脳卒中治療効果は、虚血再灌流処置の前投与だけでなく、後投与時においても認められ、そのTherapeutic Time Window は虚血再灌流処置後3~6時間であることが明らかとなった(論文投稿準備中)。(2)生体内安定性を高めるためにGAI-Xを母核とした非ペプチド性低分子化合物SH-001の合成法を確立し、MCAOモデルにおける有効性の評価を行い、以下の結果を得た。・SH-001の側脳室内投与により脳卒中治療効果が認められた。・SH-001末梢投与(腹腔内投与)による有効性を検討したが、脳卒中治療効果は認められなかった。以上の結果より、SH-001はGAPDH凝集阻害活性を持つものの、脳内移行性が低く、抹消投与においては十分な治療効果を示さないことが示唆された。今後、SH-001の誘導体合成による、脳内移行性の高いGAPDH凝集阻害剤の創製が期待される。本補助金により、新規脳卒中治療戦略としてGAPDH凝集阻害が有用であることが明らかとなった。今後、GAPDH凝集阻害剤の脳内移行性を向上させることで、より臨床的な適用方法による有効性が期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 292 ページ: 4727-4742
10.1074/jbc.M116.759084