研究課題
小惑星などの小天体表層での衝突クレーター形成について調べるため、これまで模擬低重力下でのクレーター形成実験を行ってきた。前年度までには粒径140μmのシリカサンド標的に対して0.1-1 Gの範囲で低速度での衝突実験を行い、クレーター直径は重力の約-0.2乗に比例するという結果を得た。今年度では、前年度に行った実験結果を小惑星の表層環境に応用した。小惑星イトカワ上にはdimpleと呼ばれる内部に岩塊を伴う窪み地形が観察されているが、成因はわかっていない。窪み内部の岩塊がイトカワの脱出速度以下で衝突したと仮定した場合、実験結果から得たクレーターサイズスケーリング則をもとに形成されるクレーター直径を推定した結果、観察されているdimple直径程度の大きさのクレーターが形成され得ることがわかった。これは、外部天体の衝突で低速度で放出された大きい衝突破片がイトカワ表層に再落下しdimpleを形成したこと、つまりイトカワのdimple地形の成因が2次クレーターであることを支持する。また、今年度新たに行った実験として、より固着力の大きい粒子層を標的とした衝突実験を行った。粒径60μmのアルミナ粒子層を圧縮した標的を用いた結果、0.1-1 Gの範囲でクレーター直径の重力依存性は観察されなかった。この結果は、クレーターサイズ形成に対して重力の影響よりも粒子層の固着力の影響が卓越していることを示している。実際の小天体表層では微小な重力環境であるため、表面の粒子層の固着力の影響が大きいことが予想されているが、重力と固着力の影響の境界となる詳しい条件については理解されていない。今回の実験条件での粒子層の固着力を測定することにより、固着力と重力の影響の境界を定量的に制約することができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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JSASS Aerospace technology Japan
巻: 14, ists30 ページ: Pk_17 - Pk_21