研究課題
本研究員は当該年度,入力信号に関する確率・統計モデルに基づき人工ニューラルネットワークを構築する枠組みの提案と,その枠組みに基づき新たなニューラルネットワークを展開する理論的研究に従事した.さらに,提案ニューラルネットワークの応用としての生体信号識別および動画像解析などの研究を行なった.研究実績としては,学術論文3編(筆頭1編,共著2編),国際会議論文2編(筆頭1編,共著1編)に加え,国内発表5件,受賞4件であった.主な成果は以下のとおりである.■次元圧縮機能を有するリカレントニューラルネットワークの提案高次元の時系列信号の次元を圧縮して識別できる人工ニューラルネットワークを提案した.提案ネットワークをコンピュータプログラムで実装するとともに,脳波信号識別やブレイン・マシン・インタフェースへ応用した.実験では,2クラスの脳波信号を約90 [%]の精度で識別できることを確認するとともに,従来手法と比較して学習時間を約200分の1に削減できることを示した.この研究成果はIEEE TNNSLに掲載された.■Johnson分布に基づくニューラルネットワークの提案歪度・尖度を持つ歪んだ分布に従うデータを識別できる人工ニューラルネットワークを提案した.提案ネットワークをコンピュータプログラムで実装するとともに,筋電信号識別へ応用し,リアルタイム上肢動作識別システムを構築した.また,本研究成果はIEEE IWCIA 2015において高く評価され,IEEE SMC Hiroshima Chapter Best Student Presentation Awardを受賞した.
1: 当初の計画以上に進展している
■当初の計画通り,入力信号に関する確率・統計モデルに基づき人工ニューラルネットワークを構築する枠組みの提案と,その枠組みに基づき新たなニューラルネットワークの構築を行なえたため■当初の予定より早く,脳波や筋電位など生体信号識別への応用を試み,期待以上の精度を実現できたため■生体信号識別のみならず,生体信号の特性解析や,動画像識別への応用まで踏み込めたため
提案ニューラルネットワークに基づく識別法を基礎技術とし,実用性のあるシステムの構築や,回帰分析・時系列予測・医用画像識別への応用を以下の手順で進めていく.1. 提案ニューラルネットの特徴である,確率モデルを内包することで少ない学習データでも過学習を防止できる点や,高次元の入力信号を圧縮して識別できる点を生かし,複数の生体信号から人の内部状態や意図,動作を推定することで操作できるインタフェースを構築する(例:家電制御インタフェース).2. 提案ニューラルネットに脈波や血圧などの生体信号と人の状態異常(病気など)との関係を学習させることにより,生体信号から容態を識別・予測できるシステムを構築する.これにより,医療機器の誤アラーム率の改善に役立てる.3. 昨年度まではデータの識別に特化したニューラルネットワークを構築してきたが,ネットワークの出力に関する制約を適切に変更することによって,回帰や時系列予測へ応用する.4. 提案法を生体信号識別にとどまらず,fMRI画像や頸動脈エコー画像,新生児動画像など画像・動画像識別へ応用する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems
巻: 26 ページ: 3021-3033
10.1109/TNNLS.2015.2400448
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医療機器学
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