1. ゲート吸着挙動に伴う吸着熱の自己抑制能 昨年度の研究で発見した自己熱抑制能が,吸着性能に与える影響を具体的にすべく,実際のCO2/CH4分離工程に着目した検討を行った。ELM-11について評価したところ,断熱条件において,現在最も有望視されている材料(HKUST-1)を大きく上回る分離能を発現することがわかった。さらに,SPCを用いた分離システムの設計を行い,従来プロセスを凌駕する性能を有することを明らかにした。 2. Ca錯体の水同位体認識 昨年度の研究において,Ca錯体の真空時,H2O吸着時,およびD2O吸着時におけるXRDパターンに差異があることが明らかになり,Le Bail解析によって格子定数を算出したところ,水吸着によって結晶構造が収縮し,かつその収縮度合いが水同位体間で異なることがわかった。そこで,path integral法を用いたMDシミュレーションを行ったところ,実測結果を定性的に再現することに成功した。 3. 構造変形の履歴現象の解析 昨年度の研究において,レイヤー積層型構造を有するSPCの構造変形に履歴が伴うことが明らかとなった。具体的には,合成直後(assyn)の構造を真空加熱処理して得られる構造(degas1)に対し,N2分子を吸脱着させて得られる脱ガス構造がdegas1とは異なる(degas2)というものである。本年度の研究の結果,degas2に対し再度N2を吸脱着させた場合はdegas2に戻るが,degas2に水を吸着させた場合はassynとなって,脱水工程を経て再びdegas1が得られることがわかった。また,各状態について結晶構造解析を行ったところ,degas2やN2吸着構造は類似の積層状態であるのに対し,assynおよびdegas1はそれぞれdegas2とは異なった積層状態にあることが明らかとなった。
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