研究課題
昨年度得られたトウモロコシ幼葉鞘におけるリン酸化プロテオーム解析結果をもとに、青色光照射によるタンパク質リン酸化状態の変化をLC-MS/MSのMultiple Reaction Monitoring(MRM)を用いて半定量的に解析した。非照射、弱光照射、強光照射サンプルに加え、弱光を照射した照射側半分と非照射側半分の5種類のサンプル間で比較した。分析は3または4試行行い結果を平均化した。解析の結果、弱光で有意にリン酸化が促進するタンパク質はZmphot1のみであった。強光ではZmphot1、Zmphot2とABCBファミリータンパク質の一つがリン酸化されていた。Zmphot1の3カ所のSer残基は暗所でもすでにリン酸化されていた。その内2カ所のSer残基は弱光照射によりリン酸化が促進した。さらに青色光の強度を上げると新たに2か所のリン酸が促進された。弱光照射でのリン酸化の一次正屈性への関与を明らかにするために、リン酸化部位であるSer残基をAla残基に置換したZmPHOT1遺伝子のコンストラクトを作成した。野生型ZmPHOT1およびリン酸化部位として同定された近傍のSer残基をAla残基に置換したコンストラクトも作製し、これらをシロイヌナズナphot1phot2欠損株に導入し現在T3種子を回収している。今後、得られた種子を用いて一次正屈性および二次正屈性を観察する。また、Zmphot1の組織レベルでの分布を明らかにするため、幼葉鞘を用いた免疫染色を遂行している。青色光によるリン酸化の制御なしにタンパク質膜局在などが変化する可能性も考えられるので、オーキシン輸送体であるZmPIN1の局在も観察する予定である。ドイツ、ボン大学との共同研究として進行してきたトウモロコシ幼根の光依存性重力屈性についても解析を進め論文を発表した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度網羅的に同定されていたタンパク質から、今年度は一次正屈性関連候補タンパク質を選抜してMRM分析による詳細な解析を行った。その結果、Zmphot1のリン酸化状態が一次正屈性を誘導する弱光により優位に増加することが示された。弱光によりリン酸化が促進するSerをAlaに置換したコンストラクトを作製し、シロイヌナズナphot1phot2欠損変異体に導入した。形質転換植物はすでにT3種子を入手中のため、近日中にそれらを用いた観察実験を行うことが可能である。また、抗体を用いた免疫染色を進行中であり、抗Zmphot1と抗ZmPIN1抗体はすでに所有している。今後幼葉鞘を用いてこれらタンパク質の局在を明らかにし、その局在に対する青色光照射の影響を解析できる。
弱光によりリン酸化が促進することが明らかになったZmphot1内のリン酸化が、一次正屈性に関与しているのかシロイヌナズナを用いて明らかにする。野生型ZmPHOT1、リン酸化部位のSer残基をAla残基に置換したZmPHOT1、リン酸化部位以外のSer残基をAla残基に置換したZmPHOT1の合計7種類のコンストラクトを作製した。これらをシロイヌナズナphot1phot2欠損変異体に導入し、現在T3種子を回収中のため、今後抗生物質体制からホモ形質転換植物を選抜する。ホモ個体でのZmphot1タンパク質の発現を確認後、暗所で2日間生育させたシロイヌナズナ黄化芽生えを用いて一次正屈性と二次正屈性を観察する。通常青色光照射後3時間程度で屈曲が確認できるが、変異により微細な変化が起こることも考えられるので継時的な観察も予定する。また、トウモロコシ幼葉鞘でのZmphot1や光屈性関連候補タンパク質であるZmPIN1の組織レベルでの局在を明らかにする。それぞれに対する抗体はすでに所有しているため、幼葉鞘に最適な固定化、切片化を決め、免疫染色を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Experimental Botany
巻: 67 ページ: 4581-4591
10.1093/jzb/erw232