本年度は、昨年度開発した医療用コンプトンカメラと画像再構成アルゴリズムを用いて、実際の分子イメージングにおける多核種3次元イメージングに向けた応用検討を行った。 臨床応用に向けたファーストステップとして、マウスを用いた生体内での多核種同時イメージングの実証実験を実施した。生体内において互いに異なる臓器に集積する特徴を持つ131I(364keV)、85Sr(514keV)、65Zn(1116keV)の3核種を一匹のマウス(8週齢)に注入し、麻酔下状態で12方向からデータ測定を行った。測定時間は各10分である。3核種各々のエネルギーピークがスペクトル上で明瞭に確認できるとともに、イメージングの結果から各々の核種が甲状腺・骨・肝臓の標的臓器に正しく集積している様子が確認できた。また撮像後に甲状腺と肝臓を摘出し、集積RI強度の測定を行ったところ、再構成イメージ上の相対強度比は20%以下の精度で再現されていることが確認できた。本カメラの高感度性により、半導体検出器ベースの従来研究では十時間以上を要していたマウス生体撮像から大幅な撮像時間短縮化を実現した。本研究では検出器コスト低減の観点から1台のコンプトンカメラを順次回転させることでマルチアングルデータ取得を行ったが、将来的に複数台のカメラをガントリ状に配置することで測定時間をさらに1/10以下にまで短縮することが可能である。 これらの結果は従来の単色を基調とする核医学診断を脱却し、多様なトレーサーを複合的に用いた新たな画像診断の扉を拓く3次元マルチカラーイメージングの実現可能性を示したものである。
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