研究課題/領域番号 |
15J05958
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
川田 将平 東京理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | トライボロジー / イオン液体 / 新生面 / 熱安定性 / 飛行時間型二次イオン質量分析 |
研究実績の概要 |
2016年度は,昨年度に引き続き,良好な潤滑特性を示すシアノ系イオン液体の分子構造の模索を行った.また,様々な分析装置を用いることによりメカニズムを調査し,イオン液体の構造指針を得た. 比較的良好な潤滑特性を示すシアノ系イオン液体は,どのような物質が摩擦低減効果を発現しているのか調査するために,飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて表面分析を行った.その結果,アニオンの摩擦表面への吸着が潤滑特性に大きな影響を与えていると示唆された.また,カチオンが摩擦表面にほとんど存在していないことから,カチオンが摩擦試験中にどのような挙動を示すか調べた結果,摩擦表面で分解してガスとして検出されることがわかった.これらの結果から,摩擦によりイオン液体のカチオンとアニオンの結合が切れて,アニオンが摩擦表面に吸着し,カチオンがガス化すると推測できる.このように結合の切れやすさが潤滑特性に影響していると考えられることから,熱安定性の試験を行った.その結果,潤滑特性の悪かったイオン液体の安定性が高く,イオン間の結合力が強かった.したがって,新しいシアノ系イオン液体の設計指針としては,潤滑特性の良いアニオンを選択し,対となるカチオンを変更することによりイオン間の結合力をコントロールすればよいと考えられる. また,イオン液体の分解は摩擦新生面が触媒として作用することにより引き起こされると考えられている.つまり,摩擦材料の触媒性が非常に重要な要素となる.よって摩擦材料を変更した場合の潤滑特性を調査した.その結果すべての材料において,イオン液体の結合力と潤滑特性の相関が得られた. 2016年度の研究でシアノ系イオン液体のアニオンが摩擦表面に吸着し,摩擦低減を発現することがわかった.2017年度では,摩擦面に電荷を与え,吸着するイオン種を選択し,能動的に潤滑制御する新しいシステムを構築する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シアノ系イオン液体の構造と潤滑特性の相関を得ることができ,材料種による影響もほぼ体系化できた. しかし,エンジニアリングとして現状では産業界への新しいインパクトがやや不足している. 当初の計画通り,摩擦表面に電荷を与え,摩擦特性を能動的に制御することにより,産業面で貢献できる結果を得る必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
現状,予定通りに進捗しており,当初の計画通り研究を行う予定である. 2017年度の研究は機械工学に留まらず,電気化学,物理化学などの分野の知識が必要であり,多くの分野での研究発表を予定している. また,優れた研究をしていることを国外にも証明する必要があるため,国際学会も多く出席する予定である.
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