研究課題/領域番号 |
15J05977
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
渡辺 千穂 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 進行性下顎頭吸収 |
研究実績の概要 |
下顎頭吸収が強く関与するといわれる顔面非対称患者の長期予後について学会発表を行った。下顎非対称を伴う骨格性下顎前突症において、術後早期に下顎骨の水平的後戻りが生じる症例では、さらに長期に渡って骨格性に変化する可能性が示唆されたため、早期に後戻りが生じる症例は慎重に経過観察を行う必要があると考えられた。当該研究のような長期予後についての報告はほとんど認められないため、有用な結果が得られたと考える。今後は顔面非対称患者の顎関節に着目し、非対称の生じる要因を探索する事で進行性下顎頭吸収の病態解明に近づくものと考えられる。また、MC3T3-E1細胞ならびにATDC5細胞におけるエストロゲン受容体の機能解析を行っている。本年度は各細胞におけるエストロゲン受容体の発現を検討した所、どちらの細胞においても発現が認められた。今後は細胞にメカニカルストレスを与え、エストロゲン受容体の発現量の変化を解析したいと考えている。さらに、東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正歯科外来に通院中の進行性下顎頭吸収が疑われる患者からの採血を行い、サンプルの回収を行った。発症頻度は稀のため、10名程度ではあったが、今後臨床データの解析とともに血液サンプルの解析(メタボローム解析・遺伝子発現解析)を進め、転写後制御機構との関連を探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、臨床研究として行っている下顎非対称患者の長期予後について、学会発表を行った。下顎非対称は下顎頭吸収が関与する場合があり、本研究の進展につながるものと思われる。上記内容については、現在論文を執筆中である。実験内容としては、昨年度より継続中のin vitroの実験と並行してIn vivoの実験系を進行中である。軟骨細胞におけるエストロゲンレセプターの機能を検討中であるが、現在複数の下顎頭吸収モデル動物を作成中であり、顎関節組織からサンプルを採取しメカニズム解明のための実験へ移行する予定である。また、次年度より行う予定であったヒトでの下顎頭吸収におけるメカニズム解析の検討を前倒しで開始した。東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正歯科外来に通院中の進行性下顎頭吸収が疑われる患者からの採血を行い、サンプルの回収を行うとともに、臨床データの解析および蓄積を進めており、精力的な研究活動を行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
進行性下顎頭吸収の患者における転写後制御機構の標的遺伝子の同定を試みる。標的遺伝子の同定後、軟骨・骨芽・破骨細胞の培養細胞ならびにモデル動物顎関節から採取した初代継代細胞を用い、標的遺伝子の発現レベルの変動による細胞表現型ならびにシグナル伝達経路を解明する。細胞表現型の検討には、増殖、遊走、分化、細胞死のアッセイを行う。さらに、モデル動物の下顎頭変形のレスキュー実験のため、標的遺伝子もしくは関連シグナル因子をターゲットとする薬剤を用いた介入実験を行うとともに、標的遺伝子改変マウスの作成に着手し、さらなる病態解明を目指す。
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