研究実績の概要 |
28年度は、集合的承認(不承認)の検討を主に行った。 同主題を研究することの意義は以下のようである。国家承認論は、それが国際法上の論点として議論の対象とされてから第二次大戦直後までの期間、伝統的には個別的国家承認に焦点を当てて展開された(もっとも、集合的承認論の嚆矢は国際連盟期にまで遡ることはできる)が、その後の議論の中心は集合的承認及び不承認へと移ってきた。この要因としては、個別的承認について、承認以前には相手国の国家性は認められないとする「創設的効果説」が学説上退けられたものの、事実として多数国の国家承認を受けていない主体(未承認国)は他国との権利義務関係が限定的であり、なお国家性と国家承認との関係を同定する必要性が認められたためであるといえる。 27年度の研究は、国家承認の法的性質はそもそもどのような議論枠組みにおいて論じられるべきであるか、近時の学説と第二次大戦期の学説・実行との乖離を手掛かりに、戦間期までの学説検討を行うものであったが、以上に述べた現在に至るまでの国家承認論の展開を踏まえれば、その現代的意義を提示するためには集合的承認(不承認)論を検討する必要があろう。 そこで、28年度は27年度の研究成果を踏まえた上で、集合的承認(不承認)に関する比較的近時の学説対立(Stefan Talmon, Jonh Dugard)を研究対象とした。 明らかとなったのは、集合的承認の法的効果に関する対立の根底には、個別的承認の法的性質をどのように理解するか、が存在すること及び、集合的不承認を巡る対立は国際法上の国家性概念に関する理解の相違があることである。 研究成果物としては、上記検討結果を7において提示した京都大学に於ける国際法研究会で発表した。それを踏まえ、論文の形で29年度中に公表する予定である。
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