研究課題
今年度の研究業績は,「非線形・制約条件付き確率制御問題を解くための数値的なアプローチの提案」と「超小型深宇宙探査機PROCYONのLessons Learnedを活かした制約条件付き軌道誘導則の提案」の2種類に分けられる.(1) Tube Stochastic Differential Dynamic Programming昨年度はStochastic Differential Dynamic Programming (SDDP)という非線形確率制御問題の最適化手法を提案した.しかし,昨年度提案したSDDPは制約条件付き問題を扱うことができず,低推力軌道設計問題を解くための実用性が乏しかった.今年度は制約条件付き・非線形の確率制御問題を解くための拡張として,Tube Stochastic Differential Dynamic Programming (TSDDP)という手法を提案した.これは制御理論分野で注目を集めているチューブモデル予測制御(Tube MPC)と融合した手法であり,U変換のシグマ・ポイントを利用したチューブを構築し,制約条件付き確率制御問題を解くことに成功した.また,モンテカルロ法によって確率的に外乱を加えた際の挙動を確認すると,従来手法よりも良い性能が達成されていることが確認された.本研究成果は2017年6月のInternational Symposium on Space Flight Dynamicsにて発表予定である.(2) 制約条件付き軌道誘導則我々東京大学とJAXAで開発した超小型深宇宙探査機PROCYONのLessons Learnedを受けて,制約条件付き軌道誘導則の一般的解法を提案した.提案手法は二段確率計画法に基づいており,SICE JCMSIに掲載予定である.
1: 当初の計画以上に進展している
非線形・制約条件付きの確率制御問題を解くための数値解法により,本研究課題である「確率的事象を考慮した低推力軌道設計手法」の理論的重要課題が解決したと言える.
今後は実用性を広げるための研究が必要である.まず第一に効率的かつ安定した最適化アルゴリズムの実装が必要である.そのためには,これまで提案されてきた軌道最適化手法が参考にできる.また,今回実現したTube Stochastic Differential Dynamic Programmingの実用性を検証するために,様々な宇宙ミッションへ適用を進めることが今後の課題である.
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SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
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