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2015 年度 実績報告書

脱細胞化技術を用いた高機能人工肝臓の構築と新規肝不全治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15J06001
研究機関京都大学

研究代表者

小木曾 聡  京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワード人工肝臓
研究実績の概要

本研究は3次元臓器再生のための鋳型として期待されている脱細胞化臓器を用いて人工肝臓の構築を試みるものである。初年度の計画としては、脱細胞化骨格へ注入した細胞の分布や生存率、ひいては再構築した人工肝臓の機能向上のため、脱細胞化骨格への細胞注入条件および細胞を生着させた人工肝臓の培養条件を至適化することであった。まず培地や還流速度の条件検討を行ったところ、生着した肝細胞の培養2日後のviabilityが95%以上となるまで改善した。さらに、細胞の注入方法の検討を行い、今回新たに胆管経路を用いた肝細胞注入方法を確立し、これまで主に用いられてきた門脈経路に比べたところ、肝実質腔への細胞分布効率が飛躍的に改善した。現在この細胞充填方法を発展させ、肝細胞に加えて、血管内皮を生着させた人工肝臓の構築に取り組み、その機能解析を進めている。また、細胞源に対する検討として、マウス胎仔肝から分離した肝前駆細胞を用いて人工肝臓を構築しその組織構築と機能を評価したところ、脱細胞化骨格内で培養された肝前駆細胞は通常の平面培養に比較して肝細胞および胆管上皮細胞への分化が促進され、胆管様の脈管構造を形成することが確認された。さらに、この肝前駆細胞を細胞源とした人工肝臓を培養したところ、その機能は成熟肝細胞を細胞源とした人工肝臓とほぼ同等であった。肝前駆細胞は、脱細胞化骨格内においても成熟肝細胞に比べてviabilityが高いことを示唆する所見が得られており、そのことが肝前駆細胞を用いた人工肝臓の機能に貢献しているものと思われた。今後は、ラットの対外循環モデルを用いながら、内皮化された人工肝臓の血栓予防効果を評価するとともに、生体での肝臓機能の発現を図る予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

人工肝臓の再構築および培地循環の方法を確立することができ、安定した培養が可能となった。また、脱細胞化肝臓組織の肝実質腔への細胞注入方法を改良することにより、より本来の肝臓に近い小葉構造を効率的に再現することが可能となった。
胎仔肝細胞から採取した肝前駆細胞を用いて人工肝臓を作成しその機能解析を行ったところ、成熟肝細胞と遜色ない機能を持つことが示され、分化の未熟な肝細胞が細胞源となり得ることを示唆するものと解釈された。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で、胆管経由で肝実質腔へ細胞を生着させる方法を確立することが出来たため、今後はこのアプローチを基本とし、門脈から血管内皮を生着させる方法と組み合わせて、肝実質細胞と内皮細胞を生着させた人工肝臓を作成する。とくに肝前駆細胞と血管内皮細胞を組み合わせた人工肝臓はこれから取り組む予定としている。また、こうして作成した人工肝臓では、肝細胞機能が内皮細胞と組み合わせることでどのように変化したか、内皮細胞がどの程度の血栓予防効果を持つのか、組織標本、タンパク分泌能、遺伝子発現などで評価していく予定である。血栓予防効果については、ポンプを用いて血液を還流させて評価を行うが、一定以上の抗血栓機能を有する場合には、生体で機能を発現させるべく対外循環回路に人工肝臓を組み込んで評価する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Laparoscopy-Specific Surgical Concepts for Hepatectomy Based on the Laparoscopic Caudal View: A Key to Reboot Surgeons' Minds2015

    • 著者名/発表者名
      Ogiso S, Nomi T, Araki K, Conrad C, Hatano E, Uemoto S, Fuks D, Gayet B
    • 雑誌名

      Ann Surg Oncol

      巻: 22 ページ: 327-33

    • DOI

      doi: 10.1245/s10434-015-4661-6

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Laparoscopic Transabdominal With Transdiaphragmatic Access Improves Resection of Difficult Posterosuperior Liver Lesions2015

    • 著者名/発表者名
      Ogiso S, Conrad C, Araki K, Nomi T, Anil Z, Gayet B
    • 雑誌名

      Ann Surg

      巻: 262 ページ: 358-65

    • DOI

      doi: 10.1097/SLA.0000000000001015

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 胆管経路の選択による脱細胞化肝臓の効率的な再細胞化2016

    • 著者名/発表者名
      小木曾聡、安近健太郎、福光剣、小島秀信、宮内雄也、山岡竜也 片山外大、河合隆之、吉利エレーナ、喜多貞彦、安田勝太郎、上本伸二
    • 学会等名
      第15回日本再生医療学会総会
    • 発表場所
      大阪府大阪市
    • 年月日
      2016-03-19 – 2016-03-19
  • [学会発表] 脱細胞化組織を鋳型としマウス胎仔肝細胞を細胞源とした三次元肝臓の構築2015

    • 著者名/発表者名
      小木曾聡、福光剣、安近健太郎、小島秀信、小森淳二、石井隆道、片山外大、河合隆之、喜多貞彦、安田勝太郎、吉利エレーナ、山岡竜也、水本雅己、上本伸二
    • 学会等名
      第70回日本消化器外科学会総会
    • 発表場所
      静岡県浜松市
    • 年月日
      2015-07-15 – 2015-07-15
  • [学会発表] 脱細胞化骨格を鋳型とし肝前駆細胞を細胞源とした人工肝臓の構築2015

    • 著者名/発表者名
      小木曾聡、福光剣、安近健太郎、小森淳二、片山外大、河合隆之、喜多貞彦、安田勝太郎、吉利エレーナ、小島秀信、山岡竜也、上本伸二
    • 学会等名
      第27回日本肝胆膵外科学会・学術集会
    • 発表場所
      東京都港区
    • 年月日
      2015-06-12 – 2015-06-12
  • [学会発表] 脱細胞化組織を鋳型とし胎仔肝細胞を細胞源として用いた三次元人工肝臓の構築2015

    • 著者名/発表者名
      小木曾聡、安近健太郎、福光剣、小森淳二、片山外大、河合隆之、喜多貞彦、安田勝太郎、吉利エレーナ、小島秀信、山岡竜也、上本伸二
    • 学会等名
      第51回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      熊本県熊本市
    • 年月日
      2015-05-21 – 2015-05-21
  • [学会発表] Fetal hepatocyte as a cell source of liver tissue engineering using a decellularized matrix2015

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ogiso, Ken Fukumitsu, Kentaro Yasuchika, Junji Komori, Takamichi Ishii, Hokahiro Katayama, Takayuki Kawai, Sadahiko Kita, Katsutaro Yasuda, Elena Y. Yoshitoshi, Masaki Mizumoto, Shinji Uemoto
    • 学会等名
      European Association for the Study of the Liver, The 50th international liver congress 2015
    • 発表場所
      オーストリア、ウィーン
    • 年月日
      2015-04-24 – 2015-04-24
    • 国際学会

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公開日: 2016-12-27  

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