研究課題
本研究は、3次元臓器再生のための鋳型として期待されている脱細胞化臓器を用いて、人工肝臓の構築を試みるものである。本年度は、前年度に確立した胆管経路による細胞注入方法と胎仔肝由来の肝前駆細胞を細胞源として用いる再細胞化アプローチに基づいて、得られた人工肝臓の機能と構造の解析を進めた。脱細胞化肝臓骨格内に生着し培養された肝前駆細胞は、肝細胞および胆管上皮細胞の両系統の細胞へ分化した。肝前駆細胞由来の肝細胞は、胎仔肝には認められないCYP3A4やUGT1A1の発現を獲得した。また、胎仔肝には存在しないCK19陽性の胆管上皮細胞による管腔構造が認められたが、肝小葉内の部位特異性は確認できなかった。人工肝臓内で培養された胎仔肝細胞は、本来持っている高い増殖活性は失われるものの、成熟肝細胞に比べてほぼ2倍のDNA残存率を示した。この高いviabilityが、成熟肝細胞を細胞源とした人工肝臓と同等の肝細胞機能を持つ人工肝臓を肝前駆細胞が構築できた理由の一つであると考えられた。この人工肝臓を、ラットの対外循環モデルを用いて評価することを試みたが、ヘパリン化だけでは人工肝臓内の血液循環の維持は不可能であった。血栓形成抑制・血液循環維持のためには脱細胞化肝臓骨格の門脈・静脈の内皮化が不可欠であると考え、類洞内皮細胞による門脈の再細胞化を行い、一定の血栓形成抑制効果と肝細胞の機能補助効果を確認した。これらの成果は、国内外の学会および国際誌にて発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Sci Rep
巻: 6 ページ: 35887
10.1038/srep35887