研究課題
本研究は乳幼児期の社会的相互作用における社会的信号処理とその発達を明らかにすることを目的とし、4つのfNIRS実験を通して自然な対人相互作用における乳幼児の行動と脳活動を検討した。(1) 社会的相互作用における12ヶ月児の脳反応:異なる2つの社会的場面における12-14ヶ月児の脳反応を計測した。その結果、乳児においても右の上側頭溝(pSTS)や側頭頭頂接合部(TPJ)領域が、社会的信号処理を担っていることがわかった。この結果は国際誌にて発表された。(2)社会的信号に対する乳児の脳反応:アイコンタクトと随伴刺激という2つの社会的信号に対する6-13ヶ月児の脳反応を検討した。その結果、右のTPJ領域が随伴性の処理に関与していることと、乳児期の対人相互作用において随伴刺激が重要な社会的信号であることが明らかとなった。この結果について、2017年の日本赤ちゃん学会では最優秀ポスター発表賞を受賞した。(3) 随伴刺激の違いによる脳反応の検討:社会的に意味のあるポジティブな随伴刺激(笑いかける)、ネガティブな随伴刺激(目をそらす)、社会的に意味のない随伴刺激(LEDが光る)に対する6-8ヶ月児の脳反応を検討した。その結果、異なる刺激特性をもった随伴刺激に共通して右のTPJ領域の賦活が見られ、随伴性についての領域一般的な要因の処理に、右のTPJ領域が関与していることが示された。(4) 乳幼児期の社会脳ネットワーク:社会的信号処理における4-7ヶ月児の前頭部と側頭部の機能的結合を検討した。その結果、社会的信号処理を担うTPJ領域と背内側前頭前野(dmPFC)領域を繋ぐ社会脳ネットワークの一部が、生後約半年の乳児においてすでに形成されていることが示された。本研究のように、自然な社会的相互作用における社会脳機能を明らかにした研究は、世界に先駆けたものであり、世界初の知見である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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