研究課題
正常大腸上皮細胞と大腸癌細胞は遺伝子変異や染色体異常をはじめとした様々な分子生物学的特徴を異にするが,上皮側における分子異常ががん微少環境との相互作用においてどのような影響を及ぼすかは明らかとなっていない.本研究では上皮幹細胞培養法であるオルガノイド培養法を用いて分子異常とニッチシグナルの関連について検討した.まず,コホートとしてまれな組織型や転移巣を含む臨床検体よりオルガノイド樹立を行い,計55ラインから構成されるオルガノイドライブラリを構築した.オルガノイドは臨床腫瘍の組織型や遺伝子発現パターンを再現することが可能であり,腫瘍モデルツールとして極めて有用であることが示された.それぞれの腫瘍オルガノイドの培養には固有のニッチ因子条件が必要であり,分子生物学的異常との比較検討により,WntおよびEGFアゴニストの必要性はおもに遺伝子変異,遺伝子発現異常によって規定されていることがわかった.その一方で,遺伝子変異非依存的にTGF-Bへの耐性を獲得している大腸癌が多数確認され,このような大腸癌の特徴として進行癌および染色体異常を伴うことが挙げられた.また,マイクロサテライト不安定性を呈する大腸癌は他の大腸癌と全くことなる分子生物学的プロファイルを有しており,その特徴であるCpGアイランドのメチル化が挙げられた.DNAメチル化が惹起される機序について検討するため,遺伝子編集技術を用いてBRAF遺伝子変異オルガノイドを作製した.BRAF変異オルガノイドは長期培養後もメチル化は獲得せず,腸内に生理的に存在する微少環境が深く関与していることが示唆された.この異常メチル化の機序については今後さらに検討を重ねていく必要があると考えられた.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1038/nature22081
Cell Stem Cell
巻: 18 ページ: 827-838
10.1016/j.stem.2016.04.003