研究課題/領域番号 |
15J06118
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗林 龍馬 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 背景音 / ハイレゾ音源 / 高周波成分 / テンポ / 行動ペース / 脳波 / 自律神経系活動 / 無意識的影響 |
研究実績の概要 |
本研究では,主観測度や行動測度だけでなく,脳波や自律神経系活動の生理測度を併用することにより,音楽が行動に与える意識的および無意識的な影響を検討する。耳には聞こえない高周波成分(20 kHz以上)をカットした音源と比べて,高周波成分を残した高音質音源(ハイレゾ音源)では,音楽聴取により脳波のアルファ帯域パワーが高くなる。また,テンポの速い音楽を聴くと行動ペースが速くなることが報告されている。以上の点に関連して,平成27年度は以下の3点を明らかにした。 1.高周波成分カット音源およびハイレゾ音源を聴きながら視覚ヴィジランス課題を行い,アルファ帯域パワーと覚醒水準(課題成績)の関係を検討した。高周波成分カット音源と比べてハイレゾ音源では,高アルファ(10.5-13 Hz)および低ベータ(13-20 Hz)パワーが高くなった。一方,課題成績(反応時間)は変わらなかった。また,ハイレゾ音源では,標的刺激により惹起されるP3成分の振幅が課題の後半で増加したが,高周波成分カット音源では変わらなかった。ハイレゾ音源を聞いてアルファ帯域パワーが高くなるのは,覚醒水準の低下ではなく注意機能の向上を反映することが示唆された。 2.高周波成分がヒトに与える影響に関する研究が進んでいない理由の一つに,高周波成分を多く含む楽器があまり知られていないことが挙げられる。楽器を録音・分析し,特定の打楽器(タンバリン)に高周波成分が多く含まれることを明らかにした。 3.同じテンポ(80 bpm)でも,遅い/速いテンポ(50/128 bpm)から変わったときに,行動(筆記)ペースが異なるかを検討した。テンポが速いときは主観的に行動ペースが速いと感じられた。実際には,行動ペースが加速したのは遅いテンポから速いテンポに変わったときのみであった。テンポの文脈が行動ペースを規定する重要な要因であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた高周波成分が視覚ヴィジランス課題に与える影響に関する検討に加え,平成28年度に予定していたテンポの文脈が行動ペースに与える影響に関する検討を行った。現在は,テンポの文脈が行動ペースに与える影響について心理生理測度の分析を行っており,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はデータ収集を主に行ったため,得られた成果をまとめ国際誌への論文投稿に注力する。平成27年度に録音収集した打楽器音を用いて,高周波成分の有無が視覚処理に与える影響だけでなく,聴覚情報処理過程に与える影響を時間分解能に優れた事象関連電位を用いて検討する。また,テンポの文脈が背景音の聴覚処理に与える影響を検討するために,事象関連電位を用いた分析を行う。
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