研究課題
①血小板減少症の原因ウイルスとしてブニヤウイルス科のsevere fever with thrombocytopenia syndrome(SFTSV)が有名であるが、その詳細なメカニズムはいまだに不明である。一方、自然科学研究機構生理学研究所の動物施設にて典型的な血小板減少症の症状により複数のニホンザル個体が死亡する事例があった。そこで、メタゲノム解析を行ったところ、SFTSVとは異なるサルレトロウイルス5型(SRV5)と強い相関がみられた。本実験ではSRV-5のウイルス分離及び全長配列の同定に成功した。また、ニホンザルに実験感染することで病気を再現することに成功した。即ちSRV-5がニホンザル血小板減少症の原因ウイルスであることを同定した。②宿主のA3タンパクはレンチウイルスの感染を抑制することが分かっている。一方、レンチウイルスがコードする Vifタンパク質は、A3 タンパク質を分解することにより、その抗ウイルス活性を拮抗阻害する。近年、イエネコのA3の一つであるA3Z3遺伝子には多型があり、少なくとも7つのハプロタイプ(Hap I-VII)があることが報告された。しかしながら、このイエネコ APOBEC3Z3 の多型と ネコのレンチウイルスであるFIVのVif の機能的・進化的関連については不明であった。本研究ではHapVがFIV Vifに対して抵抗性であることを示し、HapVが進化的に正の進化を遂げてきたことを初めて実証したものである。つまり、イエネコの進化過程において、A3Z3 Hap V が正に選択されてきたこと、またその進化が祖先の FIV Vif タンパク質によって駆動されたことが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は新たに血小板減少症の原因ウイルスがSRV-5という新規のウイルスであることを証明できた。加えてウイルスと宿主の共進化についても実験科学として実証し、進化学的にも大変有意義な研究が遂行できた。故におおむね順調に進展しているといえる。
28年度は長崎大学の安田二朗教授のご協力のもと、SFTSVの病原性メカニズムを様々な宿主因子をノックアウトしたマウスを用いて解析する予定である。また、動物間での病原性の違いのメカニズムを解析する予定である。
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