研究課題
SFTSウイルス(SFTSV)は2011年に中国で発見された、新規のブニヤウイルス科フレボウイルスであり、重症熱性血小板減少症候群の原因ウイルスである。SFTSVはヒト特異的に病原性を示すウイルスとされており、実験動物として一般的であるマウスには感染するが病原性を示さないことが知られている。一方、自然免疫で重要とされているI型インターフェロン受容体欠損しているマウス(IFNar KOマウス)やSTAT2を欠損させたマウス(STAT2KO マウス)に対しても高い感受性を示す。このことから、マウスはSTAT2依存的な自然免疫によってSFTSVを制御していると考えられる。SFTSVのゲノム中にはNSsがコードされている。NSsはヒトSTAT2と結合しリン酸化を阻害することでI型IFN反応を抑制する。そこで、SFTSVのNSsはマウスSTAT2の機能を抑制できず、SFTSVはマウスで病原性を示さないのではないかと仮説を立てた。本研究ではNSsのマウスSTAT2に対する感受性を調べることを目的とする。様々な分子生物学的手法を用いて検証したところ、NSsはマウス細胞でI型IFN反応を抑制できず、マウスSTAT2と結合できないことがわかった。また、NSsはマウスSTAT2のリン酸化を抑制できないことも解明した。以上の結果からSFTSVのNSsはマウスSTAT2と結合できないために、そのリン酸化を阻害できず、I型IFN反応を抑制できないと考えられる。そのため、通常のマウスにおいてはSFTSVが感染した際にNSsがマウスのI型IFN反応を抑制することができず、ヒトで見られるような病原性を示さないと考えられる。このことから、SFTSVのNSsと宿主のSTAT2の関係性がSFTSVの宿主特異性を決定している一つの要因であると推察できる。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画通り、SFTSVの宿主特異性はウイルスのNSsと宿主のSTAT2の関係性が規定していると推察されるデータが取れた。加えてSFTSVのリバースジェネティクスシステムの開発に必須である全ウイルスゲノムのクローニングに成功している。故におおむね順調に進展していると言える。
29年度は現在申請中の第二種使用等拡散防止措置確認申請書が受理された暁には組換えウイルスの作製に取り掛かる。その後、様々な変異体を作出し、その機能を細胞及び個体レベルで確認する予定である。
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Microbiology and immunology
巻: 60 ページ: 272-279
10.1111
巻: 60 ページ: 427-436