研究実績の概要 |
これまでの研究からドナー系分子は、①充放電の繰り返しに伴う容量密度低下が大きく、初期のエネルギー密度を持続することができないこと、②中性状態での低伝導性による活物質の配合率を高くできない、という問題点があった。そこで、①,②を解決するため、「縮合型ドナー・アクセプター分子系」の合成を行い、物性の検討を行った。 ドナー部位としてテトラチアペンタレン(TTP)、アクセプター部位としてp-ベンゾキノンまたはナフトキノンが縮合したTTPQ(1)およびTTPNQ(2)の合成を行った。1のチオメチル体 (BTM-1)の室温伝導度が10-3 S/cmであり、LiCoO2には劣るが中性状態における有機化合物としては高い伝導性を示した。一方、2のチオメチル体 (BTM-2)の室温伝導度は10-7 S/cmであった。BTM-1およびBTM-2のチオメチル体を正極活物質として用いた電池を作製したところ、ドナー部位とアクセプター部位由来の酸化還元に対応する充放電挙動が得られた。1.5-4.2 V間での活物質の配分率が10%のときの2サイクル目の活物質あたりの放電容量は、BTM-1/Li電池が270 mAh/g、BTM-2/Li電池が260 mAh/gでありサイクル特性も良好であり、初回放電エネルギー密度はそれぞれ、823 mWh/gおよび782 mWh/gであった。また、初回放電容量のみ見れば、配分率を向上させても55%程度までであれば良好な放電容量を示すことが期待できる。配分率を上げた電池のサイクル特性を観察したところ、2サイクル目の放電容量からサイクルを繰り返すと劣化し、放電容量は50 mAh/g程度まで低下していく。しかしながら、配分率が高くなるにつれ伝導性が高いBTM-1 /Li電池の方が高い放電容量を示すことがわかった。
|