本研究では,多種多様な樹木の苗木を適地適木に基づき疎密をつけて植栽を行う森林再生技術(通称,自然配植)が自然度の高い森林を再生するかどうかを検証するために,2つの比較研究を行った。 ■比較研究Ⅰ:自然配植と播種工が約25年前にそれぞれ導入された法面において,林床植生を含む群落構造の違いを明らかにし,林内の光環境が林床植生に及ぼす影響を検証した。自然配植が導入された法面(以下,自然配植法面)では植栽木を中心に階層構造が発達した森林が形成されており,林床には播種工が導入された法面(以下,播種工法面)の約40倍と,多くの稚樹が確認された。一方,播種工法面では導入樹種の一つであるヤマハンノキが高木層に優占する一斉林が形成されていることが明らかとなった。林床は草本類で被覆されており,稚樹はわずかに確認されたのみであった。さらに,林内の光環境が林床植生に及ぼす影響を検証した結果,階層構造の発達した森林における光環境は,鉛直方向と水平方向の多様性が高く,一斉林における光環境はいずれの方向も一様であることが明らかになった。そして,一斉林では光環境の一様性が草本類の優占を招き,草本類の被覆による地表面の暗さが稚樹の発生を妨げたと考えられ,階層構造が発達した森林では多様な光環境が稚樹の生育を可能にしたことが示唆された。 ■比較研究Ⅱ:自然配植と他の植栽パターンを比較するために,自然配植区・規則分布区・ランダム分布区(苗木の密度2種類)・無処理区の計5種類の試験地を2015年度に設置し,施工から約一年後の初期状態を比較した。その結果,植栽から約一年で樹種ごとの枯死の発生や成長,樹勢の違いは見受けられたが,植栽パターンごとの違いは確認されなかった。 以上より,自然配植は多様な植物によって構成され,階層構造が発達し,光環境も多様である自然植生と同等の森林を形成する森林再生技術であることが明らかとなった。
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