研究実績の概要 |
近年, ミトコンドリアの融合・分裂に関わる因子が多数同定され, ミトコンドリア動態の制御機構が明らかになってきた. ミトコンドリア動態の異常は, パーキンソン病などの神経変性疾患の発症に関与する. 当研究室では, 融合阻害によってミトコンドリア動態を変化させる新規因子mitochondrial fusion inhibitor (MIFI)の機能解明を進めている. そこで本研究では, MIFIの発現制御が神経変性疾患の新規創薬標的になりうるかどうかを明らかにする. 本年度に得られた成果は以下の通りである. ①MIFIの発現制御機構の解析:HarmineによるMIFIの発現制御機構について, MAO-A選択的阻害剤harmalineとDYRK1Aの選択的阻害剤INDYを用いて解析した. その結果, 神経芽細胞腫SH-SY5Yにおいて, INDYが用量依存的にMIFI発現を増加させ, MIFIの発現誘導機構の一つとして, DYRK1Aを介したシグナル経路の関与が示唆された. ②神経毒誘発性の細胞死におけるMIFIの機能評価:SH-SY5Y細胞を用いてin vitroのパーキンソン病モデルを作製し, MIFI過剰発現の影響を評価した. MIFIの過剰発現細胞において、ロテノン誘導性のPI陽性細胞数の増加, PARP切断の増加, 活性酸素種の蓄積, およびミトコンドリア膜電位の低下が促進した. これらのことから, MIFIの発現上昇は, 神経毒誘発神経細胞死を増悪させる可能性が示された. ③MIFI欠損マウスの作製:CRISPR/Cas9システムを用いてMIFI欠損マウスを作製するため, 本年度は, CRISPR/Cas9発現プラスミドの作製を行い, 作製したプラスミドをマウスの受精卵に顕微注入し, F0世代のMIFIヘテロ欠損マウスを得た. またこれまでに, 得られたF0マウスを用いて, F1世代のMIFIヘテロ欠損マウスを得ている.
|