研究実績の概要 |
近年, 様々な生命現象・病態をミトコンドリアの動態制御 (分裂や融合) の視点から解明する試みが, 急速に進みつつある. ミトコンドリア動態の制御機構は, その品質管理だけでなく, 細胞機能の維持にも重要であり, その異常はパーキンソン病などの神経変性疾患の発症にも関与する. 当研究室では, 糖尿病病態下で発現減少する新規因子Mitochondrial fusion inhibitor (MIFI) を同定し, 同病態との関連や, ミトコンドリアの融合阻害作用等を明らかにしてきた. しかし, MIFIの生体内における生理的役割や, 神経変性疾患病態との関連は明らかでない. そこで本研究では, 分子薬理学的手法を用いたin vitro/in vivoでのMIFIの機能解析を進め, MIFIを介したミトコンドリア融合阻害の生理・病態的意義を解明することを目的としている. 具体的には, 内因性MIFIのin vivo機能や, パーキンソン病モデルを用いてMIFIの創薬標的としての意義を明らかにする. 本年度に得られた成果は以下の通りである. ①MIFI欠損マウスの作製ならびにその表現型解析: 全身性MIFI欠損マウスの作製に成功し, 本マウスの生存率が生後早期に著しく低下することや, 発達プロセスで障害が起こることを見出した. ②パーキンソン病モデルにおけるMIFIの機能評価: In vitroパーキンソン病モデルにおいて, MIFIの発現抑制がミトコンドリアの動態を制御し, 細胞を保護する可能性を見出した.
|