研究実績の概要 |
本年度は新規PDI酸化酵素GPx7/8と協調して働くPDI酸化酵素Ero1の新規活性制御機構を明らかにし、J. Biol. Chem.誌に採択された。Ero1が酸素を酸化力の源とする一方で、GPx7/8は過酸化水素を酸化力の源としてPDIを酸化する。また、GPx7/8はそれぞれ過酸化水素と反応しスルフェン酸を形成するシステイン(CP)と、このCPを還元し分子内ジスルフィド結合を形成させるシステイン(CR)を有する。これまでの我々の研究によってGPx7/8はEro1を加えることにより、PDI酸化活性を増大させることが示されている。また、蛍光タンパク質を用いたBiFC法によってEro1とGPx8間の相互作用を確認している(T. Ramming, M. Okumura, S. Kanemura, et al., Free Radic. Biol. Med., 2015)。これらの結果から、Ero1がPDIを酸化する際に産出される過酸化水素を効率よくGPx7/8が消費しPDIを酸化していると考えられる。そこで、GPx7/8と過酸化水素の反応性を調べた。その結果、GPx8に比べてGPx7は過酸化水素との反応性が非常に高かった。さらに、GPx7/8によるPDI酸化活性を調べたところ、GPx7はGPx8よりも効率よくPDIを酸化した。興味深いことに、変異体を用いた実験によりGPx8はCPとCRが必要なのに対して、GPx7はCPのみで野生型と同等のPDI酸化活性を示すことがわかった。つまり、GPx8は二つのシステインを介した酸化機構で、GPx7は一つのシステインを介した酸化機構であることが示唆された。以上の研究により、ジスルフィド結合形成ネットワークの上流に位置するGPx7/8とEro1の新たな作用機序を明らかにし、小胞体におけるタンパク質品質管理機構に関する新しい重要な知見を得た。
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