研究課題/領域番号 |
15J06368
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飯田 恵理子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | タンザニア / ウガラ / 疎開林 / 哺乳類相 / 人間活動 / 生活知 / スクマ / 牛の放牧 |
研究実績の概要 |
タンザニアの西部にあるウガラ地域において、哺乳類の分布と密度、疎開林内での人間活動、地域住民と自然環境との関係についての調査を行った。 ウガラでは、1990年代にはすでに中大型哺乳類の生息密度は著しく減少した可能性が高いことが示唆されている。1980年代以前には、いたるところで見られていたゾウ、バッファロー、ライオンなどの大型哺乳類の痕跡は、2015年の調査では見られなかった。 現在では、過去には見られなかったウシの放牧、畑、チェーンソーを用いた大規模伐採など、疎開林内での人間活動の内容の多様化も認められるようになった。特に、牛の放牧が動物相の分布に与える影響の一端が示唆された。2011年に、スクマの人びとがウガラの疎開林内に牛を連れて入ってきているという噂を耳にしたが、それ以降も調査域で牛を見かけることはなかった。しかし、2015年の調査では動物調査用トランセクトで牛の放牧やその痕跡を見かけない日はなくなった。また、今回の調査から放牧に加え、町への移動ルートとしても疎開林が利用されるようになってきたことが分かった。調査地から一番近い町には牛の売買が行われる定期市場ができた。そこに牛を売りに行くために、調査地よりも北東の道沿いにある村からウガラの疎開林内を通って牛を売りに行くというルートが確立されたようだ。牛の痕跡が多くみられる地域では、ローンアンテロープ、ハートビーストといった大型草食動物の痕跡の発見頻度が低かった。その一方で、ここ数年ほとんど痕跡が見られなかったハイエナの咆哮や痕跡を確認した。ハイエナは現地において、家畜を襲うことが知られている。牛の放牧とハイエナの行動域の関係についてさらに分析を進めたい。 地域住民の植物利用の調査から、これまで材木や炭に利用されていた樹種が手に入らなくなってきたために、年々使われる樹種が変化してきたとの情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンザニアへの渡航をおこない人間活動が生態環境に与える影響についての資料を収集することができた。 予想よりも周辺住民による保護区内への出入りが活発化しており、当初予定していた地域間の比較調査については思ったように進まない部分もあった。 今後、調査で得られた結果の分析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのウガラ地域における調査から、大型哺乳類の痕跡の発見頻度が昨年までとは違った傾向をみせてきており、動物相の生息域が変容しつつあることが示唆されつつある。今後も、調査を続けることで継続的なデータを収集していく予定である。 周辺住民による保護区内への出入りの活発化が激しく、予定していた人の出入りの頻度の異なる地域間の比較調査から「人と野生動物の関係性」について調査がはかどらなかったため、新しいアプローチ方法を考え試みていくつもりである。 過剰伐採により、伐採対象樹種が年々変化してきているとの情報を得たので、こうした伐採樹種や商品として出回っている樹種、またその市場価格についても調査をおこなっていく予定である。 今後、調査で得られた結果の分析を進めることで人も含めたウガラの生態系を明らかにしていきたい。
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