研究実績の概要 |
生物は外界からの刺激を感覚器・感覚神経により受容し、その情報処理をおこなう。刺激の中には生体に対して有害なものも含まれるため、それらに適切に応答し身を守ることは生存上必須である。ショウジョウバエ幼虫の一次感覚神経であるClass IV dendritic arborization neuron(Class IV neuron)は、異なる有害な刺激(高温、機械刺激、短波長光)に応答し、各々に対して固有の忌避行動を惹起させる(Tracey et al., Cell, 2003; Hwang et al., Curr. Biol., 2007; Xiang et al., Nature, 2010)。そのため、この神経が感覚入力を区別して処理して、下流の回路に情報を伝えると考えられたが、その機構は不明であった。 私たちは、赤外線レーザーを熱刺激装置として用いた顕微鏡観察系を構築した。そして、強い熱刺激時にClass IV neuronにおいて、単なる連続的な発火パターンとは異なる、高頻度の発火とそれに続く発火停止期で構成されるBurst-and-Pause型の発火パターンが生じることを発見した。この特徴的な発火パターンの発生には、L型電位依存性のカルシウムチャネルが必要であることがわかった。光遺伝学の技術を用いて、Class IV neuronにBurst-and-Pause型の発火パターンを強制的に誘導することに成功し、その際に熱刺激から逃れるための回転行動が亢進することを明らかにした。本研究成果は、英国科学雑誌「eLife」誌でオンライン公開された(日本時間2016年2月16日0時)。
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