研究課題/領域番号 |
15J06399
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
笘野 哲史 広島大学, 生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 集団構造 / 資源貢献 / マイクロサテライトマーカー / DNAバーコーディング / 産卵水深 / バイオテレメトリ |
研究実績の概要 |
平成27年度は日本沿岸におけるアオリイカ類の資源貢献と保全単位の評価を目的とし、研究計画に従い以下のことを行った。 1.日本各地におけるシロイカとアカイカの資源貢献の把握:アオリイカ類には別種レベルに遺伝分化した3種類(アカイカ、シロイカおよびクアイカ)が報告されていたが、日本沿岸域における3種の資源貢献は不明であった。そこで、アオリイカ漁業が盛んである日本沿岸の 9 地点から計586個体のアオリイカ類を解析に用いた。大隅諸島の個体は釣獲水深(2~53m)の記録を基に分布水深を推定した。種判別にはミトコンドリアDNAの一般的なバーコーディング領域であるCOI領域およびシロイカにて開発された高感度マイクロサテライトDNAマーカーを用いた。その結果、西日本においてシロイカが優先種であるが、大隅諸島ではアカイカが優先種であることが明らかになった。また、アカイカはシロイカに比べ分布水深が深いことが明らかになった。 2.アカイカにおける資源の保全単位の提唱:上記の1.の結果より、アカイカは大隅諸島で重要な沿岸資源となっていることが分かった。そこで、アカイカの漁獲量が大きい大隅諸島を含む日本本土から台湾における本種の集団構造を明らかにすることを目的にサンプル採集を行い、日本本土からから台湾における集団間の遺伝的分化および遺伝的多様性の評価を行った。その結果、各集団でほぼ同等の遺伝的多様性を持つことが明らかとなった。さらに、集団全体で有意な遺伝分化が認められた。 3.シロイカの回遊範囲と利用水深の推定:報告者らの先行研究と1.の結果から、アカイカとシロイカでは利用水深が異なることが示唆された。そこで超音波テレメトリ追跡による両種の産卵回遊(範囲や水深)の解明を目的に、平成27年度は水深(水圧)センサーを備えた超音波発信器の装着方法の予備検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.日本各地におけるシロイカとアカイカの資源貢献の把握: サンプル採集も順調に進み、日本沿岸の 9 地点、静岡伊豆(n=47)、高知宿毛(n=56)、鹿児島甑島(n=55)、長崎平戸(n=63)、島根出雲(n=40)、長崎対馬(n=76)、鹿児島指宿(n=72)、種子島(n=113)および屋久島(n=64)の計586個体の採集に成功した。解析も順調に進み、現在は学術論文を執筆している。 2.アカイカにおける資源の保全単位の提唱:1と同様にサンプル採集も順調に進み、大隅諸島の種子島(n=50)および屋久島(n=30)、奄美大島(n=4)、日本本土(鹿児島指宿、甑島、和歌山、高知宿毛、宮崎, n=12)に加え先行研究(Imai and Aoki, 2012)で用いた台湾(n=36)、石垣島(n=18)、沖縄本島(n=40)の合計190個体を解析に用いた。解析も順調に進み、平成28年の日本水産学会にて口頭発表を行った。 3.シロイカの回遊範囲と利用水深の推定:水深(水圧)センサーを備えた超音波発信器の装着方法を予備検討するため、オス親イカの腹側漏斗付近へセンサーを装着した。そして、2秒間隔で発信される信号を追跡型受信機によって船上より追跡し、約30時間のデータ受信に成功した。現在はデータの解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1および2ではサンプル採集がほぼ完了したため、解析をさらに進め、論文執筆を行う。 3では、小型発信器の装着部位を見直し、さらなるデータ取得を試みる。そして、アカイカとシロイカの産卵水深を解明するため、実際の海域にて本試験を行う。
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