研究課題/領域番号 |
15J06436
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉村 幸徳 広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | トポロジカル絶縁体 / アンダーソン局在 / メゾスコピック |
研究実績の概要 |
トポロジカル絶縁体の表面にナノスケールのステップ構造などの微細構造を導入した場合,有限サイズ効果が表面状態の頑強性に及ぼす影響を解明することのを目的とする.3次元Z_2トポロジカル絶縁体の有効モデルであるWilson-Dirac型ハミルトニアンの立方格子系に対して,Z_2指数の計算という解析的なアプローチと,各サイトにランダムなポテンシャルを配置してリャプノフ指数を計算するという数値的なアプローチにより,本年度は,[1]弱いトポロジカル絶縁体の表面に複数の完全伝導チャネルが存在する場合をの頑強性の評価,[2]ナノ薄膜および [3] ナノワイヤを対象とした研究を行った.[1]弱いトポロジカル絶縁体の劈開面にトポロジカルに保護された一次元完全伝導チャンネルを創出できる.今回は完全伝導チャネルが複数本共存している系を対象とした.このような系に不純物を導入したモデルでスペクトラルフローを確認する事によって不純物に対して頑強な完全伝導チャネルが共存し得るという研究結果を得た.[2] 原子数層程度のナノ薄膜では上面と下面にできる表面状態がバルクを通して混成しギャップが開いてしまうという有限サイズ効果がある.この効果により表面状態の存在を保障するトポロジカルな性質が変化してしまうことを確認するため,トポロジカルな性質を示す二次元的トポロジカル数(Z_2指数)を層数Nとギャップ・パラメータm_0の関数として計算し,様々なトポロジカル物質の薄膜系に適応可能なZ_2指数の相図を完成させた. [3]ナノワイヤの表面状態は有限サイズ効果によってベリー位相を獲得する.この効果を打ち消すようなπフラックスをワイヤー内部に挿入したモデルとフラックスの挿入無しのモデルについて,転送行列法等によるリャプノフ指数の計算を行い,ナノワイヤの表面状態は有限サイズ効果により局在傾向にある事を示唆する結果を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,初年度はリャプノフ指数の計算による評価を中心に行う予定であったが,新しい手法の習得に時間がかかったためあまり進展していない.一方で,次年度に行う予定であった解析的な評価はすでに習得済みの知識の応用で対応できたため,予定を早めて行う事とした.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に行う予定であった転送行列法を用いた局在長の計算による頑強性の評価を行う。
|