研究課題/領域番号 |
15J06469
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 暢子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | アフリカ / 国際社会 / 地域紛争 / 強制移住 / 帰還 / 再定住 / 離散 |
研究実績の概要 |
2016年度には、約6ヶ月間にわたる現地調査をウガンダ共和国のアジュマニをはじめとする北西部の各県で行なった。2016年現在、ウガンダ北部のウェスト・ナイル地方(West Nile Sub-Region)には8県が含まれているが、そのうち5県で新旧の難民定住地が運営されている。今回の調査では、この5県すべてをまわった。現地では、難民の受け入れ体制が既に整いつつある地域と、そうでない地域との違いや、地元民の難民受け入れに対する意識の違いについて、ウガンダで難民にかんする諸事項を管轄する首相府やUNHCR、国際人道機関の職員にインタビューするとともに、難民および受け入れ地域の地元民への聞き取り調査を重点的に行なった。とくに今回の調査では、隣国に暮らす親族や知人を訪ねて頻繁に国境を越えている人たちに焦点をあてた結果、難民と地元民といった区別は非常にあいまいであることが明らかになった。これは、交易や親族訪問などの日常的な移動に加えて、ウガンダ独立前後の出稼ぎのための移住(おもに他県への労働力流出)や、1970年代末以降から2000年代まで断続的に続いた内紛などと連鎖して人びとが移動を繰り返してきたためである。なお、上記の紛争時には、北西部で保管されていた多くの行政資料が焼失してしまったといわれているが、教会関係の施設が保存している当該地域の歴史資料の保管状態は悪くなく、それらを閲覧することができたのも収獲であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度に収集した文献を整理し、本研究の対象となるウガンダ北西部の地域史についてまとめて分析する作業が進展した。現地調査の際には、同じくフィールドワークを実施していた海外の研究者や、帰省していた現地の研究者との交流が進展し、彼/彼女らとの定期的な研究交流の必要性と、日本語以外で研究成果を発信していく重要性を再認識した。今年度のフィールドワークにおける体験を関連する先行研究の読解とともにまとめた短報1本が学術雑誌に掲載予定であり、また、昨年度に提出した博士予備論文(修士論文に相当)を投稿論文とするために書き直す作業もおこなった。2017年度には、少なくとも2件の学会発表などを控え、アウトリーチ活動を行なっていく目途がたったことは昨年度よりの大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度の現地調査では、個別事例の収集に執着したあまり、定量的なデータを入手できていない点が反省される。国内外での日常的な移動をはじめ紛争を契機に避難生活を経験した人びとの体験を丁寧におっていくことは引き続き行なう。そのうえで2017年度に予定している現地調査では、現在あらたに難民を受け入れている人びとをフォローアップすることを第一の課題とする。また、アウトリーチをしっかりと行なう。
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